仕事として参加させてもらうのはこれが初めてだけど、以前からちょっぴりと交友、交流はあった人たち。HéliadeはSète(セート)の町に基盤をおき、エレーヌ(Elene Golgevit)に指導、指揮される女声コーラス。2005年、2006年にフランス、イタリアの大きなコンクールで大賞を獲得して、今やあちこちにひっぱりだこで大活躍をしているグループなのです。メンバー14人の顔ぶれはバラエティーに富んでいてとってもユニーク。というのも、まず年齢からいって、20歳の学生から58歳までという幅の広さ。そしてメンバーの中には、プロの歌手として活躍するもの、プロを目指して修行中のもの、すでに声楽を教えている人、ピアニスト、ソルフェージュの先生、といった音楽畑のプロの人から、生物学者、コンピューター技師など、音楽を趣味で楽しむ上級アマチュアなど、ほんとみんなそれぞれです。しかも現在、セート在住、モンペリエ在住だけでなく、ジュネーブに住む人、パリに住む人、リヨンに住む人、さらにロンドンに住む人までいて、そんなみんなが「歌が好き」ということと、「エレーヌと歌いたい」、「この仲間と歌いたい」という思いだけを理由に、なんとかして練習のスケジュールを組み、コンサートなどで発表の場を広げているのです。
私がなんで彼女たちと知り合ったかというと、6年前、私がモンペリエに来た時に出会った友達レイラが、当時セートのコンセルヴァトワールでエレーヌの生徒だったからなんです。当時、まだ勉強中とは言え、周囲を驚かせる声の持ち主だったレイラのピアノ伴奏をしていたので、レイラのエレーヌとのレッスンについて行ったりして、エレーヌの門下生、さらにはエレーヌの家族ともちょっぴり交流したのでした。当のレイラはリヨンのコンセルヴァトワールに進んだあと、見事にストレートで卒業し、今いろいろなオーディションにも通って、パリの劇場で歌ったり、華々しいキャリアがスタートしようとしている真っ最中。彼女も忙しいだろうし、コンタクトはキープしているけれど、去年の夏から会ってないな、、、。
まあこういうわけで、最初はレイラの友達として彼女たちのコンサートを聴きに行ったり、彼女たちが日本語の歌を歌うというので日本語指導に顔出したりしたこともありました。でも正直言って、ほんの数年でこんな立派なグループに成長するとは思ってもいなかった。。。2005年に彼女たちが大賞をとったコンクールというのは、毎年Tours (トゥール)で行われる有名な国際合唱コンクールで、いろいろなカテゴリーに分かれて賞が与えられます。日本の合唱団も参加していたと聞きました。このコンクールで優勝してから、CDはプロデュースされるは、フランス各地に招かれるだけでなくイタリアにも招待されるは、モンペリエのラジオフランスノフェスティバルでは歌うは、その活躍はとんとん拍子です。
Héliadeのサイトもあるので見てみてください。
http://heliade34.free.fr/
で、このグループを率いるエレーヌ。まだ40代前半の若い人なのだけど、レイラをはじめ若い歌手を上手に導く人で、才能があって芯はあるけど優しい人柄もあって、彼女の周りにはとても温かい人の輪があります。これまで長年セートのコンセルヴァトワールを中心に指導してきたけれど、この夏、一大決心をしてパリに居を構えることにしたそうです。この先、どんどん活躍してますます忙しくなっていくことでしょう。
さて、今回のお仕事はこのエレーヌからいただきました。「普段のピアニストが都合がつかないので代わりで来てくれないか」と。
今、彼女たちが取り組むのは「BISTANCLAC !」という室内オペラ。19世紀の紡績工場で働く女性たちをテーマにしたオペラで、作曲者はJean=Marc ・Boudet。彼はモンペリエオーケストラのトロンボーン奏者でもあります。モンペリエのすぐ北に広がるセヴェンヌという地方がありますが、一世紀前、ここ一帯は紡績業が盛んで、大きな工場がありました。そこで働くのは11歳から70歳までの女性たち。この彼女たちを取りまとめるための規則があったわけですが、その文を知ったジョン=マルクが、音楽をつけるアイディアを得て、さらに女性だけのコーラスHéliadeと出会ったものだから、Héliadeに捧げる女声コーラスとピアノのための室内オペラの作曲に取り掛かったのでした。
来年の2月が初演ということで、演出を含めた練習を、各地に散らばるメンバーが久しぶりに集結して集中練習をしたのがこの週末だったのです。普段はセートで練習する彼女たちだけど、この週末はモンペリエのCORUMでした。 残念ながらレイラはパリで仕事があって不参加だったけれど、他のメンバーと会うのもすごく久し振り。
演出を担当するのはベラ・クジュポン。私の名前を聞いた彼は、「僕の名前もちょっぴりエキゾチックなんだ。」といってハンガリー系だと説明してくれました。そういえば、ベラという男性と出会ったのはこれが初めてだけど、ベラという有名人がいましたね。そう、作曲家のバルトークの名前はベラです。
私はどんな曲かも、どんな背景かも知らないまま練習の場にいき、初見で体当たり。これがなかなかおもしろい曲で、自分は初見真っ最中だから余裕もなく、大したことはできなかったけれど、これからの仕上がりがとっても楽しみです。土曜の夜には作曲者のジョン=マルクも来て、いろいろと指示を出してました。
ネット上でこのオペラの一部分が出てたんでぜひのぞいてみてください。
http://fr.youtube.com/watch?v=62Oq81GlmKE
歌詞とセリフは基本的に工場の規則の文なんです。そこに機械のメカニックな感じや女性の要素が混ざって、おもしろい音楽ができあがっています。
やっぱり自分で作曲する人こそが、本物のミュージシャンだと改めて思いました。工場の規則からオペラを作るその発想力。ほんとに英語で言う「It's interesting !」のように、フランス語では「c'est intéressant !」、日本語では(興味深い!)の意味で「おもしろい!」
そして、もちろん演出家の仕事もほんと知れば知るほどすごいと思います。オペラなんかの場合、音楽の存在を十分に配慮して活用しないとだめですからね。さらに新作初演のオペラなんかだと、テーマとテキストについての勉強をし、音楽を聞いて、作曲者の意図を理解し、そこからアイディアをどんどん出して一つの舞台にもっていく。しかもそこには現実的な予算や時間の問題もあります。すべてをうまく融合して統括できてこそ、一流の演出家。
さて、どんな舞台ができあがるんでしょうか。
私自身はこの週末の練習で頭の集中ですごく疲れたけど、クリエイティブな場にいるとわくわくしちゃいます。11月の練習にも声をかけてもらったので、次回が楽しみです。
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