2009年1月29日木曜日

Voyage en Europe

今週の火曜日と水曜日に、オペラjrの子供たちのグループ Choeur d'enfants がコンサートを行いました。

テーマは「Voyage en Europe」(ヨーロッパ旅行)。ヨーロッパ各国の作曲家をとりあげて紹介しようということです。が、コンサートの時間は1時間だし、曲数も限られていて紹介できる作曲家の数はわずか。結局、この旅行で訪れるのはドイツ、フランス、イタリア、ロシア、ハンガリーの5カ国となりました。



もともとオペラjrのChoeur d'enfants は9歳から16歳までということだったのですが、今年度は14歳から16歳の年長組がオペラ「ディドとエネ」に参加するために、Choeur d'enfants は二つに分かれた状態です。頼りになるベテラン勢がいない年少組というだけでも大変化なのに、40人中30人以上が歌未経験者の新人グループになってしまいました。9月から活動を開始して、歌は初めて、楽譜なんて読めるわけもない、そして規律ある団体行動なんてしたことない子が大半をしめるグループを相手に、指導者のヴァレリーも疲労困ぱい状態が続き、どうなることやらと思いましたが、全曲暗譜での1時間のコンサートになんとかこぎつけました。



発声方法もこれからトレーニングしていかないといけないし、音程、フレーズの仕方などなど学ぶことはこれから山のようにあるけれど、世代交代後の新しいグループの初めてのコンサートとしては良い出来だったと思います。

いつものようにピアノのすぐ横にこっそり置いたマイクで録音したもので、バランスも質もよくないけれど、オペラjrではめずらしい曲をよくとりあげるので、なかなか他に聞く機会もないでしょうから、曲紹介のつもりで、ここに載せさせてもらいます。

プログラムはまず、ロシア代表でストラヴィンスキーから始まりました。

Igor Stravinsky (1882-1971) : Trois Histoires pour les enfants

「子供のための3つの歌」ということですが、この3曲の内容に関連性はありません。

1. Tilim-bon  ヤギさんの家で火事が起こったという騒ぎの歌。チリンボンとは火消しの鐘の音をあらわしています。





2. Les canards, les cygnes, les Oies...  (カモ、白鳥、がちょう、、、)

星の奇麗な夜にみんなで仲良く寝ようとしてりときに、ノミが一人落っこちて「ボク死んじゃうよ~!」という奇妙な歌。。。




3. Chanson de l'Ours  (熊の歌)

全曲に引き続き、これが子供のための歌か?と首をかしげたくなる内容。

「あるところにおじいさんとおばあさんがいました・・・・。」というナレーターで始まります。昔話のようでいいのですが、実はおじいさんに腕を切られて、おばあさんにそれを料理されてしまったクマの復讐劇。最後は「熊はおじいさんとおばあさんを食べてしまいました」というナレーターで終わるもんだから、この場違いなサディスティックさに笑えてしまう。



続いてプログラムはドイツへと移りました。
ここでは合唱ではなくて、ソロの曲が2曲紹介されました。

Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) : Dans un bois solitaire

モーツァルトがまだ若いころに作曲した曲。フランス語の歌詞に曲がつけられています。歌ったのは特別ゲストとして参加した、ディドグループのF。年長者とは言っても、彼女もまだ16歳です。彼女はオペラjrに私と同じくらいの時期にやってきた子で、メンバーの中ではもうベテランさん。私は彼女の飾ったところのない透明感のある声が大好きです。




つづいて同じくモーツァルトの小さな歌曲「An die Freude」を、Choeur d'enfant のTが歌いました。 まだ14歳になったばかりの子です。

ドイツの次はハンガリーへご案内。

バルトークのように、ハンガリーの民謡からインスピレーションを得て作曲活動を行ったリゲティの作品。彼はつい最近2006年に亡くなったのですね。

Gyorgy Ligeti (1923-2006) : Matraszentimerel Dalok

4つのアカペラ曲からなる作品。今回はちびっこ新人グループだったので、念のためにピアノで一緒に弾きました。

1. Harom Hordo

お酒を飲んで楽しもう!といった内容です。





2. Igaz szerelem

訳せば「True Love」ですから愛の歌ですね。

3. Gomb, gomb

ポンポンのこと。ポンポンって日本語だとなんと言うのでしょうか?ほら、ふわふわの飾りのことです。そのポンポンをつけたかわいいあの子を思っての歌。




4. Erdobe, erdobe

森の中へ散歩にいくという歌。この曲は三部合唱です。



ハンガリーの後は、イタリアの紹介となりました。

ここでも合唱ではなくて、4人のソリストの歌です。イタリア歌曲というと、日本で音楽を学んだ人にとっては、意外と馴染みのある音楽です。作曲者名はあまり知られていないけれど、メロディーは聞いたことがあるという人も多いのでは?

まずはディドグループからのゲストとして、CがAndrea Falconieri (1585-1656)の「 Bella porta di Rubibi」を歌いました。彼女はまだ14歳。

続いてイタリア歌曲の定番中の定番、Francesco Gasparini (1668-1727)の「 Caro laccio, dolce nodo 」を、同じくディドグループのAが歌いました。彼女は16歳です。



次は名前も知られているFranscesco paolo Tosti ( 1846-1916) の「 Malia」をChoeur d'enfants のBが歌いました。彼女はコンサートで一人で歌うのが初めてなうえに、高熱を出してしまって不調でしたが、普段は透明感のある高い軽い声をもった14歳の子です。

イントロからして「イタリア」色の曲ですね。





そしてイタリアの最後として、先ほどモーツァルトを歌ったTが、Antonio Caldara (1670-1736) の「 Sebben, crudele」を歌いました。この曲も日本で副科声楽をした人には超有名な曲ですね。

さて、本来ならイギリスへも足を運ぶべき旅行でしたが、一時間のプログラムはここで終盤へと入ります。

Jean Absil (1893-1974) : Le cirque volant

フランス語圏ということでフランスとして紹介されましたが、厳密にはジャン・アブシルはベルギーの作曲家です。教育者としてもすぐれ、ブリュッセルの王立音楽院などで教鞭をとりました。Cirque volant は「空飛ぶサーカス」。子供のためのカンタータとして書かれました。

1. Entrée 歌なしでの序奏の後、サーカス開催を宣言するナレーターが入ります。





その後、各曲の合間にナレーターが入り、曲のつなぎをはたします。

2. Les pumas (ピューマ)




3. Le danseur de corde (綱渡りの踊り子)





4. L'amazone (アマゾン)



5. Les clowns (ピエロ)



6. Les chiens savants (学者犬)





7. Le fakir (術師)





8. Buffalo Bill バッファロ・ビル





以上で今回のプログラムが終了です。

実はこの「Cirque Volant 」、私が初めてオペラjrにきた2003年に、演出付きの舞台として公演されたんです。当時私はいろいろと問題をかかえていて、結局この公演には参加しなかったのですが、5年たって今度は自分が弾く立場となり、過ぎた時間が不思議な感じです。

この曲はこのあとも引き続き練習を続けて改良改善を加えてから、5月にモンペリエのオーケストラと一緒に地方遠征公演にでる予定です。

今回、この新メンバーを始めて公に紹介した形になりましたが、評判は上々。特に子供たちの親にしてみれば、楽譜も読めない子たちがよく難易度の高い曲を、しかも暗譜で発表できたということが驚きのようで、誇り高々になってた親が多くておもしろかったです。

スタッフの内輪では、とにかくかわいい子供たちのことが話題になりますが、今回のコンサートの一番ヒットは、最前列中央のちびっこおしゃまさん二人組。

彼女たちは歌に夢中になると同時に、ステージの上でライトを浴びていることに恍惚となったのか、お色気満々になって、一人は自分のスカートのすそを徐々にたくしあげ始め、もう一人は自分のお腹や胸のあたりをなでながら歌い始めたりして、客席から見ていたスタッフは大ウケ。まさに「ちびっこロリータ」です。指揮をしていたヴァレリーも「スカートから手を放しなさい!」って注意をしてみたけれど、まったく通じなかったみたい。

あとで、ちょっぴりからかい半分で本人たちに言うと、まったく自覚がなかったみたいで、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていたのがさらにかわいかったです。

ちびっこ新人軍団。これからどんなふうに成長、上達していくのかとても楽しみになりました。

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