2023年1月22日日曜日

ストライキ!

日本のニュースでも伝えられていたようですが、先週の木曜日、フランスでは久しぶりに大規模なストライキが全土で行われました。

政府が発表した年金制度の改革案に反対する動きですが、特に、年金の受給年齢の引き上げに対する猛反発が大きな理由です。62歳だったのを64歳に引き上げると政府が発表したのです。

これには様々な職業の人々、様々な世代の人々が受け入ることはできないと声をあげました。あと数年でリタイアだと、楽しみにきていたものを突如先延ばしにされると知らされた人々はもちろん、もうやってられんと言わんばかりのロスジェネ世代はもちろん、そもそも年金を受給できるのかすら怪しいと思って将来が不安な若年層ももちろん、自分はすでに年金を受け取っている身だけれど、こんな改革はおかしいと声をあげるシニア世代も加わりました。政府の改革案に対する強い反対の声がはっきりと示されています。

フランスには大きな労働組合がいくつもありますが、その中でも主要な組合が声をそろえて合同でストライキをするというのは実は珍しいことで、今回の動きの強さを示しています。

SNCFを始めとした公共交通機関では、早くから欠便、欠航の発表がされていました。

結果、モンペリエでも終日トラムは完全ストップ。

 

 

ガスや電気、ガソリンといったエネルギー業界でも、小学校から大学の職員も、さらには医療関係者、警察官や消防隊員、政府の官僚まで、とても幅広い職層を含めたストライキとなりました。

終日休校となった学校も多く、授業をしない先生の数は多いし、学校に行かないことにした生徒も多く、街は一日ストライキの日という様相となりました。

トラムが一切走らないというのは、基本的にメーデーの日だけですから、トラムの音も、トラムを待つ人の姿もない日となって、街全体ががらーんとした感じになりました。

 

 

 

日ごろ、SNCFやエアフランスが頻繁にストを起こして、欠便や遅れがたくさんでると、フランス人もさすがにストライキに対して批判的な声をあげる人が多くなってきていましたが、今回の全国的なストライキに関しては、大方国民の総意と見なしてよい感じです。 

ストライキの日には各地でデモ行進が行われますが、モンペリエでは新市街地のアンチゴーンから旧市街地のコメディ広場まで練り歩き、参加者はおよそ1万5千人だったといいます。

フランス全土では、政府側の発表で112万人がデモに参加したとの発表がありました。組合側の発表では全国で200万人が参加したという数字がでました。 これは当初の予測よりも多くて、近年の社会運動としては、最大規模の抗議活動となったといえます。

組合側は満足と言うか、手ごたえを感じていますが、もちろんこれで政府側がすぐに改革案をひっさげるわけでもなく、ストライキの続行が早々と宣言され、次回は1月31日火曜日との日程が確定しました。

日本人とフランス人の気質は、真反対といってもいいようなところがあって、社会にたいする態度、政治に対する態度は、まさに正反対。日本では政治が決めることを、どこか「お上が決めたこと」と受け止める風潮がいまだ根強い感じがします。そこへ「我慢は美徳」という文化が根本から加わっていますから、おかしな政治決定に対して、反対の声をあげる人がごく少数というのが日本社会だと思います。ストライキだって、もう長いこと実質的に行われていませんよね。ストライキをすることで誰かに迷惑がかかる、お客様に迷惑がかかるという発想の方が、労働者の権利よりも強いということに尽きるでしょう。そこがフランスでは、言葉は悪いですが、「そんなこと勝手に決めるな、バカヤロー!」という態度が基本です。そして「以心伝心」という文化ではありませんから、思っていること、考えていることは、声に出して伝えるというのが基本です。反対の考えをもっているのなら、街に繰り出して声をあげようというわけです。

また、日本では「自己責任」の考え方が重くのしかかり、社会的弱者に対しても、その状態に陥った原因や理由を問われがちですが、その点フランスでは、困窮する立場にある弱者に対する配慮や連帯の姿勢は根強く、そこはさすが人権宣言の国、転んでも社会主義国だなあと思います。「年金だけでは老後の生活に不十分だから、各自○○千万円準備しておくように」というお達しが出る国が存在すること自体、フランス人には理解できないでしょうし、そのお達しに従って、各自いそいそと準備をするという国民達が存在するということも、フランス人には理解できないことでしょう。すかさず「それじゃあ国や政府はなんのために存在するのか?」という問いが出ておしまいだと思います。

フランスでストの日にあたってしまったツーリストにはお気の毒ですし、自分だって大事な旅行の日がストライキに重なってしまったらいまだに怒り爆発とはなるのが正直なところではありますが、フランス社会がフランスという国に成り立つ社会である以上、ストライキやデモの動きが消え去ることはないだろうなと改めて感じた日でした。

1 件のコメント:

まるこ さんのコメント...

日本での交通ゼネストは1974年以来ないかと思います。