今週から二週間、モンペリエの地方では春休みともいえる4月のバカンスとなりました。フランスはバカンスの国としてよく知られていますが、現状は想像を超えるのだからもうびっくり!バカンスを中心に国が機能していると言っても過言ではないんじゃないかしら。
まず、フランスで働いている人は基本的に年間5週間の休みを確保する権利を持っています。日本人は、少しずつ社会が変わってきてるとは言え、有給休暇すべてを実際に取る人はまだ少ないと言われているし、そもそも一週間もまとめて休みをとれるというチャンスは全ての人に与えられてはいないですよね。休みを一週間まとめてとれたら、それはもう素晴らしいことであって、二週間も三週間もまとめて休みが取れる人なんて、ごく少ない職種の人に限られていることだと思います。その点フランスは5週間が最低なんですから、この違いは大きい。日本では有給休暇をすべて利用しない人がほとんどだと話すと、みんなあいた口がふさがらない、、、という感じですよ。
そして子供たちもすごいのです。小、中、高の学校では、夏休みの2か月にわたる大バカンスと、年末年始の二週間のクリスマスバカンスの他にもなんと、秋にはトゥッサンと言って先祖のお墓参りをする、日本でのお盆のような時期に10日間の休み、冬休みとして2月に二週間の休み、そして春休みとして4月に二週間の休みがあるのです。
私が働く音楽学校では、この学校のバカンスシステムと同じリズムでレッスン回数が決められているうえ、年度はじめと最後に余裕をもたせているので、年間のレッスンの数を言うと、なんとたったの32週なんです!ちょっとレッスンして生徒の調子が上がってきたかな、と思うとバカンス!また再開してリズムを整え出したらまたバカンス!そしてまた数週間後にはバカンス!!ほんとにこの繰り返しで、一年はあっという間に終わってしまうのです。日本人が42週レッスンをしているとして、この差は10週分!しかもフランス人のバカンスは文字通りバカンスですから、バカンス明けには「ごめん、練習できなかった。。。」と言う生徒の多さ。しかも「練習しなかった。」ではなくて、「練習できなかった。」ですからね(笑)
そして日本との違いが教師の労働環境に見られます。こちらフランスでは、学校の先生たちは子供と同じだけ休みがあるんです。親が教師の家庭ではもう文字通りのバカンス天国。親と子供が一緒に過ごす時間がないなんて、現代社会ではよく聞く話ですが、彼らにとったらそんな心配はないことでしょう。
フランス人は普段質素に暮らしているけど、一体何にお金を使っているのだろうか、、、という疑問は、このバカンスの様子を見ていたらわかります。そうです。バカンスにお金を使うのです。子供づれの家族にとって、バカンスは避けてはとおれないシーズンです。もちろん裕福な家庭、そうでない家庭と差は大きくあるのでしょうが、いずれにせよ、子供たちが学校に行かない週が、年に16週もあるのですから大変です。そもそも、フランス人が一泊二日だとか、二泊三日でスキーにいくなんてことはまずありません。一週間スキーに行くのです。さすがに冷静に考えてみて、4人家族が一週間スキーに出かけたら、そりゃあ費用も大した額だろうな。
こうしてバカンスが多いだけに、国もきちんとそれに対応した制度をとっています。2月の冬休みと4月の春休みには、バカンスシーズン中の観光地、行楽地への人の集中を緩和するために、フランス全国が地理的に人工的にもまんべんなく三つのゾーンに分けられて、一週間ごとずらしてバカンスシーズンをとるのです。そのために今日の記事の冒頭で、モンペリエの地方はバカンスに入りました、と書いたのです。モンペリエはゾーンAに分けられていて、他にはトゥールーズ、リヨン、ナンシー、ナント、レンヌといったように地理的にもばらばらな地域がゾーンAのグループです。もっとも人口の多いパリ地方は唯一ボルドー周辺の地域と組んでゾーンC。そして残りすべてがゾーンB。こうやって人工的にもバランスがとれるよう配慮されているのです。このシステムに従って、ディジョンの人達は来週から二週間バカンスで、モンペリエでバカンスが終わった時に、パリの人たちがバカンスをスタートさせるのです。
さて、このバカンスのために、私も音楽学校での仕事は二週間お休みなんです。私がこの仕事しかしてなかったら、私もバカンス天国を地で行くところですが、現実は現実なわけで、よっぽどハイクラスな仕事でない限り、労働時間が少ないということは、それだけお給料もおさえぎみになるわけです。そのため、例えば日本で教師と言えば、しっかりした収入を得ていると思いますが、実質的な労働時間が少ないため、フランスではそうとも言えないところがあります。
そんなわけで、私にはオペラjrでの仕事もあるおかげで、ありすぎる(?)バカンスをうめると同時に収入の方もおぎなっています。というのも、オペラjrでは、日頃から土日を利用して練習をしているのですが、特に大きな舞台の本番のためには、バカンスを利用して集中的な仕上げの稽古をして本番に備えるというリズムがベースとなっているのです。 そのために、バカンス天国フランスにいるにもかかわらず、結局私のバカンスは夏の8月と年末年始の10日ほどだけになってしまうことが多いです。とまあ言っても、これだけ休みがあれば日本人にとったらすでにすごいことです。自分のこのバカンスの日数を、他の人と比べて少ないなんて感じてしまってる分、すっかりモンペリエ色に馴染んでしまっていますね私も。
今回のバカンスも、このバカンス明けに本番を迎えるオペラのために、今日から二週間は集中的に練習が組まれているのです。今回の舞台は Jacques Rebotier (ジャック・ルボチエ)が2001年に発表した「L'indien des neiges (雪のインディアン)」という子供のための現代オペラです。オペラjrの9歳から16歳までの子供グループ Choeur d'enfants の出演で、モンペリエのオペラ座で4月29日、30日、そして5月3日の3回の公演があります。私は練習ピアニストとして参加していますが、現代オペラなだけに難しいんです。でも言葉遊びもりだくさんの台本と、8つのチェロのために特別に書かれた音楽はとても興味深く、ぜひとも成功させなければいけない大きな舞台です。
普段はCORUMという近代的な文化ホール施設の練習場で練習しているのですが、今日からオペラ座の舞台での稽古を開始しました。昨日紹介したコメディ広場のオペラ座です。1888年にこけら落としをされた劇場をそのまま今日も使っているのですが、劇場内は一見の価値のある、私のおすすめスポットでもあります。今週は月曜から土曜まで6日日間連続で練習をするので、しばらくの間、このオペラネタで報告したいと思います。
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