「Affaire étrngère」(おかしな事件、奇妙な出来事)というオペラ。
前知識もなにもないままに、プレ・ジェネラル(本番さながらの通しリハーサル一日目)から参加した私ですが、予想外にオリジナルで新鮮な企画だということを知りました。
作曲したのはValentin VILLENAVE (ヴァロンタン・ヴィルヌヴ)という24歳の若者!
この彼のプロフィール、そしてこのオペラ誕生の裏話を聞くととてもオリジナル。若いエネルギーと新鮮なアイディアをもって積極的に売り込むことの大切さを改めて教えてくれます。
公式に発表されているプロフィールからですが、彼本人曰く、彼は「パリ郊外のしがないピアノ教師」だといいます。
役者家族のもとに生まれた彼は、作曲を特別に専攻していたわけではなく、コンセルヴァトワールでピアノ、ピアノ伴奏、和声法、ジャズ、オーケストレーションを学び、ピアノ教師やダンスの伴奏ピアニストとして活動をはじめたといいます。そして即興の腕をみがきつつ、自分の生徒には自作の曲を与えたりしていました。しかし今から四年前、20歳の時に「オペラを書きたい!」という強い欲求が生まれました。彼は総合芸術であるオペラに強いパッションがあったのです。
そこで彼はオペラの台本探しを始めます。
しかし、彼の求めるリズム感のよいエネルギーあふれる台本というのはなかなか見つかりません。
そんななか、彼は子供のころから読み親しんだマンガの作者のことを思いました。フランスで言うマンガというのはbande dessinée (バンドデシネ)のことで、日本のコミックマンガとはまた違うスタイルです。彼が好きなマンガ作家というのはLewis Trondheim のこと。20歳の彼は改めてLewis Trondheim の全作品をよみあさりました。そしてこのマンガ作家の公式サイトを通じて大胆な提案をしてみたのです。
「僕はパリ郊外のピアノ教師です。僕と一緒にオペラを作ってみませんか? オペラを書いたことはないのですが。。。」と。
そしてこれに心よく応じたLewis Trondheim。
「喜んで!僕だってオペラに参加したことはないんだから、これが初めてになる!」と。
そこでマンガ作家が提案したのは、2001年にJochen Gerner との共同執筆で発表された「Politique étrangère」という話。
こうしてマンガ作家自らが、登場人物のカットなどもしながら、オペラの台本としてまとめなおしました。ちなみにマンガからオペラが誕生したのはこれが初めてのこと。Jochen Gerner も加わって、3人そろって初めてのオペラ制作。大冒険です。話し合いを重ねながらそれぞれが作業を進めていったといいます。
そうしているうちに大きな出来事がありました。
2006年初めに、Lewis Trondheim がAngoulemeで開催されたマンガフェスティバルのグランプリを獲得したのです。
これを契機に自分たちの企画を実現するために、大きな組織に売り込もうと決意した作曲家が、ダメもとでメールを送った相手が、モンペリエ音楽界の王様R. K氏。単にLewis trondheim がモンペリエ出身だったから思いついたのだそうです。
このメールに2時間後に返事がきました。
「この計画の実現は喜びです!」とR.K氏からの快諾でした。
こうして今日の舞台が生まれたのです。
立派なキャリアをもったベテランの大物アーティストが作り出す舞台ももちろん素敵ですが、たまにはこうして経験のない新人が作り出すオリジナルな舞台というのは本当に新鮮です。大きな初体験にのりだした製作スタッフのドキドキわくわくの舞台裏の様子が手に取るようにわかりますね。
これでこそ冒険。
人生は冒険。
Aventure です。
次はオペラの内容をお伝えできたらいいなと思います。
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