2009年2月16日月曜日

soirée des régisseurs

この前の週末、オペラ座のRégisseur GénéralであるTさんのおうちで「みんなでわいわい夕食会」がありました。集まったのは10人で、みんな Régisseurばかり。Régisseur généralは、日本では「舞台監督」、英語ではステージ・マネージャーと言われ、普通にRégisseurと言うと、日本で言う「舞台監督のアシスタント」という職業の人たち。この日集結したのはモンペリエのオペラ座の常任スタッフの人、フリーの人、そして研修中の人、そして私。

「今日はregisseurばっかりのsoiréeだね!・・・・ あ、でも違うやつが一人いる。leonardo... 」とつっこみを入れられかけましたが、別の人が、「あ、でもleonardoも一度やったよ!」と思いだしてくれて、なんとかrégisseurだけのパーティーに、この私も régisseurのはしくれとして認めてもらいました。

舞台監督と一口にっても、演劇の舞台なのか、オペラなのか、それともコンサートの舞台なのか、バレエなのか、とかそれぞれ仕事の内容は変わってきます。それでもまとめて言ってしまえば、舞台の進行を円滑にするために、すべてのスタッフとコンタクトをとり、チームプレイを統率する役目の人です。ひとつの舞台に関わるスタッフの数はとても多く、それぞれの専門、役目は広範囲に広がります。ざっとあげてみても照明、音声、大道具、小道具、衣裳、メイクなどがありますが、舞台監督は一つの舞台の計画立ち上げの段階から、これらそれぞれの部門と密なうちあわせを重ねていくのです。そして実際の舞台の進行のため、客の入場の管理から始まり、照明、大道具など舞台裏のスタッフから出演者も含め、分刻みの準備の段取り、そして舞台でのトップ出し(キュー出し)をするのも舞台監督の役目です。

オペラの場合、すべてが音楽にそって進行していくので、すべての計算は楽譜をもとに行われます。しかし、照明さんや音声さん、大道具、小道具さんたちは楽譜は読めないし、読みません。演出家だって楽譜をもとに仕事をするわけではありません。演出家は歌詞はもちろんだけど、耳で聞こえる「音」と「音楽」をもとにイメージふくらませ、その「時間」を頼りに舞台上の動きを決定させていきます。この演出家が望む「舞台」が、演出家の望む「タイミング」で実現できるように物事を調整するのが舞台監督の仕事です。たいていの演出家はアシスタントをつれているので、舞台を作るためのすべての下準備とすべての調整は、舞台監督と演出家のアシスタントにゆだねられているといっていいでしょう。

オペラには指揮者、オーケストラ、そして歌手という音楽畑の専門家たちが参加しますが、この人たちと舞台裏のスタッフの作業すべてを調整して統率するというのは至難の業です。しかも指揮者や歌手のようにスポットライトを浴びる人たちと違って、舞台監督というのは舞台裏に徹する人。まさに影の人ですが、舞台の構造から、照明、音声など知り尽くしていないと務まらないし、何より大人数を統率するのでコミュニケーション能力にたけていないと務まりません。はたからみたら「雑事」のようなことまですべてに関わっている人なので、まさに「オールマイティー」を求められる職業。

普段、フランスで暮らしていると、日本で女性に求められる「こまやかな気遣い」というものは存在せず(笑)、ずべてが大雑把でそれぞれの気の向くままにことが進みますが、このRegisseurたちは、コミュニケーション能力にたけるだけでなく、隅の隅まで目が行き届いていてるので、こまやかな心遣い、気づかいを心得ていて、気のきかない私なんてぼ~っとしてて、ふと気持のよい気づかいをしてもらうと、「お、あなたは日本人か?」と驚いてしまうくらい。

それから、彼らは演出家や指揮者やオペラ歌手など、ひと癖、二癖、難もありの個性の強いアーティストたちとの接し方も心得ているので、ある意味「冷静な目」をもった人たちでもあります。観客が羨望の目で見つめる大物歌手なんかの舞台裏での素の姿などを普段から見ているから、「家政婦は見た!」じゃないけど、彼らはいろんなことを知ってるわけです。それに彼ら自身、もともとダンサーだった人、振り付けや演出もしていた人(現在もすることもある)、ミュージシャンだった人、演劇畑にいた人、などなど、その道を知っている人たちばかり。

そんな職業を持つ人ばかりが集まったわけだけど、みんな普段から一緒に仕事をして、気もあってる人たち。しかも料理名人ばかりなので、みんなが持ち寄り、おいしい食事においしいワインにと、とても楽しいソワレだったのだけど、実はメンバーのうちの2人の誕生日パーティーも兼ねていたんです。

数日前に誕生日を迎えたGと、数日後に迎えるM。ふいに出てきたろうそくいっぱいのケーキに、二人とも顔をほころばせます。そして子供さながら「ふ~~~~っ!!!」とろうそくの灯消し。







いくつになったって、誕生日を祝ってもらうのはうれしいし、祝ってもらって幸せそうな人の顔をみるとこっちもうれしくなっちゃうもんです。

この日の圧巻はデザート。バースデーケーキの他にも二種類のガトーショコラと二種類のティラミスが用意されたんです。




こりゃたまんないね~状態。

現在モンペリエのオペラ座では「ディドンとエネ」と3月頭公演の「ファウスト」の二本のオペラの準備が同時に進められています。この日集まったメンバーはみんなどちらかの舞台に関わっていて、連日休みなしのハードスケジュールのなか、この日曜日だけがみんなの休日だったんです。12時過ぎまでとっても快適なソワレを過ごし、また翌日からの過密労働に耐えるための精気を養って、2台の車に分かれてみんな仲良く帰りました。


日ごろ、フランス人気質、特にモンペリエ人気質に囲まれて暮らしていて、何かと不満の多い私は、舞台監督たちの気質が好きで、こういう人たちとのチームプレイなら大喜びで参加したいなと思っているのですが、この世界でやっていくにはやっぱりまだフランス語が弱いなと思い知らされる。特にいつなんどきでも大きな声ではっきりと声を出していかないといけないのに、フランス語だと「大きくはっきり」がまだできない。
この日集まった10人の中には一人イタリア人もいました。超超かわいいE。私たちは去年の3月に知り合いましたが、彼女もまだフランス語が完璧とはいえない私とおんなじレベル。理解力は私よりも弱いし、同じ悩み、同じネックをもっているかなとは思うのだけど、私との違いは「話し方」。イタリア訛りも強いけれど、積極的に話す。しかも「大きくはっきり」。やっぱりイタリア人だ。
私は日本語だったらもっと声出していけるけど、外国語ではそう簡単じゃない。。。フランス語特有の子音だらけの発音でどうやって大きな声でしゃべれるのか。。。。
影の人たちでありながら、すべての人とコミュニケーションをとらなきゃいけない彼ら。単に「ひかえめ」ではだめなんです。存在感があって前に前に出ていくエネルギーがあって、それでもこまやかな気配り、気づかいも必要。う~ん。。。一日本人の私にはまだまだ遠い。。。。

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