一か月前くらいに紹介した○○○○のフランス語の先生。
私とは患者仲間である、とあるおばあちゃんのことです。覚えていますか?
今年91歳になった彼女は、昔からかかえる膝の故障の問題を抜きに話せば、本当にエネルギーに満ちた元気なおばあちゃん。今朝もまた、数週間ぶりに会っておしゃべりをしたので、そろそろ正体明かしをしなくてはと思ったわけです。
○○○○とは誰のことなのか?
その人が東京に住んでいるというのは言いましたが、詳しく言えば東京も東京、誰もが知っている皇居に住んでいる方なのです。
ということは?
おばあちゃんと呼ぶのもなんなので、Mさんとさせてもらいますが、彼女は1980年代半ばに3年間の日本滞在をしました。そして、なんとこの間、皇居に毎週一度通って、皇后陛下美智子様のフランス語の先生をしていたのです!
Mさんはイギリス文学を専門にしていらっしゃいますが、イギリス文学とフランス語の教師として、人生の大半を海外で過ごしてきました。これまでに滞在した国はたくさん。イギリス、イタリア、スイス、オーストリア、スペインからアメリカ、そして日本、韓国、タイなど。
日本滞在中は、東京のS大学で教鞭をとり、イギリス文学とフランス語を教えたそうです。そして宮内庁からフランス大使館に美智子様のフランス語の先生探しの依頼がいき、そして頼まれたのがMさんだったのでした。
今から20年以上前の3年間のことですが、何がすごいって、Mさんと美智子様はその後もずっと手紙のやりとりを通してコンタクトをとりつづけていて、今でも美智子様からMさんに手紙がくるし、もちろんMさんも美智子様に手紙を書いてらっしゃいます。
それを聞いた私は間抜けにも、
「え、それって、宛名の住所は-皇居-って書くんですか?」
と質問してしまいました。
フランス語で言えば、Palais (パレ)ですよ。しかもPalais Impérialなのです。
「うわ~。」ですよ。
日本人にとったら、「天皇」というのと「皇帝」や「帝王」というのでは、ちょっとイメージが違いますが、すべて「エンペラー」なわけで、フランス語ではempereur(アンプルーに近い発音)となります。そして女帝の場合、もしくは皇后は impératrice (アンペラトリス)と呼びます。
したがって美智子様は、Impératrice Michiko と呼ばれるのです。
今朝、久しぶりにMさんに会ったわけですが、彼女は元気な笑顔で「あなたに会えるのが本当にうれしいわ。だって、日本を思い出すから。。。」と言ってくれました。そしてもちろん彼女の思い出話を聞きたい私は、ついつい質問してしまいます。
この前に会った時は、外のベンチで二人仲良く並んでおしゃべりしたので、いろんな話を聞けました。
美智子様や天皇陛下のお人柄がよくうかがえるエピソードなどたくさん。どうやらお二人とも、私たちが持つイメージそのままのお人柄のようですよ。
また、皇居なだけに、皇室と宮内庁のいろいろなしきたりにまつわる話にも事欠かず、美智子様とは素敵な関係を築いたMさんですが、「protocole (プロトコル) しきたりだけはもう!」と茶目っけたっぷりに笑ってみせます。
サルコジ、シラクの前の社会党の大統領、ミッテランの時代に天皇陛下ご夫妻はパリを訪問されましたが、その時に、美智子様のたっての依頼で、フランス政府はMさんを探し、Mさんはパリで行われたフランス共和国主催の歓迎レセプションパーティーに、美智子様のご友人として招待されたのだそうです。そして二人が再会したときのエピソードをちょっと紹介しますが、美智子様をエスコートしてきたのがミッテラン大統領だったそうです。そしてとある部屋で待機していたMさんを見て、ミッテランはきょとんとした顔をしたそうです。だってMさんはちっちゃなちっちゃなおばあちゃんだから。そしてミッテランは「あなたが美智子様のフランス語の先生なんですか?」と驚いたように言ったとか。
91歳のおばあちゃんが楽しそうに思い出話をしてくれるのを聞いてると、こっちまで楽しくなっちゃいます。私もけっこう冒険生活をしていると思うけれど、Mさんも世界各国で冒険をしてきたんだな~と思って。
Mさんは日本でとてもいい思い出をたくさん作ったようで、大学での教え子ともとても素敵な時を過ごしたそうです。穏やかな日本人(「一般的にはね」とちゃんと一言付け加えていたけど)、そして日本の風景などが気に入ったそうですが、特に日本人の自然への接し方が印象深かったそうです。
世界中に自然を愛する人はたくさんいるけれど、神道の文化はやっぱり一味違うんでしょうね。自然と生活がしっかり結びついていた民族ということでしょうか。
Mさんは天皇陛下ご夫婦のご成婚50周年のこともしっかり把握していました。
もしももしも、いつか美智子様から日本へのご招待の連絡が来たら、私が通訳兼お供で一緒に行きますからね!と立候補しておきました。
91歳の今でも現役のフランス語の先生であるMさん。外国人留学生相手にフランス語のレッスンや、論文執筆のサポートをしているそうです。
元気に生き生きと生きるお手本のような人。エネルギーあふれる素敵なおあばちゃんです。
でも本当に思ってもいませんでしたよ。モンペリエのとある診療所で、美智子様と交流のあった人とおしゃべりすることになるなんて!
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