テーマはL'Humour en Musique。訳すと「音楽におけるユーモア」といったところでしょうか。コンセプトはウラジミールによるものでしたが、選曲はかなり苦戦しました。基本的に音楽だけで構成されるコンサートだし、単に詩がおもしろいだけとか、オペラコミックの一場面とかだけでは、本当の意味での「音楽におけるユーモア」にはなりませんからね。アメリカ演奏旅行後の3月から、わずか二ヶ月半ちょっとで準備したものですから、いつも以上に準備不足も否めません。クラシックから現代まで幅広くバランスのとれた曲でプログラムができましたが、土壇場のちょっぴり演出もウラジミールがし、「大丈夫なんかな~、、、?これおもしろいんかな~、、、」とみんながちょっぴり疑う本番前となってしまいました。
火曜日の夜はConcert scolaire と言って学校向けのコンサートで、水曜日が一般向けということなんですが、火曜日はどうしてもまだ準備段階といった感じだったので、水曜日の午後の練習で、ポイントを絞ったダメ出しをし、今夜は満席だという知らせも受けて、みんなよい意気込みで練習を終えました。
サル・モリエールというのはオペラコメディの後ろ側にある小ホールで、オペラ座のコーラスが練習に使うほか、室内楽や小さなグループのコンサートに使われます。オペラjrは「Mercredi de l'opera jr : オペラjrの水曜日」と題したシリーズで、年に三回コンサートをしています。今年度は12月がChoeur d'enfants の子供たちによるバロック音楽のコンサートで、二月はGroupe Vocal によるフランス音楽のコンサートで、そして今回が三回目となるわけです。
写真を見てもらうとわかるように、本当に古くてかわいらしいホールなんです。
でも古いだけにただの箱型そのままホールで、ホール内の音響には特別な設備やしかけなどなく、さらには外部と内部の防音がまったくできてなくて、ホールの横を通るごみ収集車の音や、浮浪者の集団の叫び声、怒鳴り合う声などがそのままコンサート中に聞こえてしまうんですね。。。。。こればっかりはなんとか改善させるべきだとは思うんですが。
この日はテレビ局France 3が取材に来ると聞いていた通り、練習の終り頃にカメラマンとリポーターがやってきて練習風景を撮影し、ウラジミールにインタビューを始めました。
フランス 3 というのは日本で言うNHKみたいな感じで、その地方版ニュースの取材でした。
開演は19時予定で、ぎりぎり18時半まで練習したのでみんなあわただしく身支度にかかりました。この日は全身で黒で決めなさいということ。彼らはリラックスしてるんだか、ちょっと緊張してるんだか微妙な感じ。
そうこうしているうちに、本番も数分後に迫った時、なんとすごい数のお客さんが来ていて、100人近い人が席がなくて入れない状態だという知らせが入りました。私も興味本位でホールの入り口ロビーに見に行くとほんとうにたくさんの人が列を作ってる。ホールには一応定員数があるわけでセキュリティの上でもデリケートな問題です。でもメンバーの親も入らせてもらえないで外にいるといった情報も入り、なんとかならないものかとあれこれしているうちに19時も20分すぎてしまいました。結局、通路に座る人、立ち見の人もでる大入り超満員となり、お客さんの催促の手拍子に押される形で開演となりました。席がないお客さんがここまでの数になったのは初めてなんじゃないかしら?
ウラジミールがワインボトルを片手に現れるという演出でコンサートが始まりました。ハイドンとベルリオーズの「酒と友情と」といったテーマの曲を歌い、プーランクのお祭りの歌まで合唱で続いたあと、サティのディーバをバーバラがゴージャスな帽子をかぶってソロで歌い、後にオッフェンバックのデゥオを二曲、ソロのレパートリの勉強をしている子たちがちょっぴり演出付きで歌いました。次にファーブルの有名な「からすときつね」のテキストをはさんでから、モーツァルトのパパゲーノ、ロッシーニの猫のデゥエットと続きました。この猫のドゥエットはマリオンとクロエが猫になりきって上手に歌ってることもあって、お客さんのウケがかなりよかったです。そしてブリテンの「リフトボーイ」に続くところで、ウラジミールの曲紹介が入るんですが、ここで英語のジュリアン、スペイン語のギエーム、そして日本語の私が同時通訳をするという演出が入りました。遠くからだとちょっとわかりにくい演出でしたが、ちゃんと笑いをとることができました。
ここからが後半、メインの曲が続きます。まずはビゼーのカルメンの有名なパッセージの歌とオーケストラを全部コーラスにアレンジされた曲。本当はアカペラでしたかったんですが、難易度の高さと時間不足から私が控え目にサポートする形になりましたが、この曲は徐々にテンポが上がって行って、技術的にとてもインパクトがあり、大歓声をもらいました。続いてサンサーンスの早口言葉みたいなダンスマカブル。どさくさまぎれにニワトリの雄たけびや魔女の笑い声まで入るから、私もピアノを弾きながら笑ってしまいました。ドイツ人作曲家エルンスト・トッフ(Ernst TOCH)が1930年代に書いたという「ジェオグラフィック・フーガ」。この曲は世界各地の地名をリズムにのせてしゃべるもので、伴奏もなければ音程もないわけですが、発音の強弱と四声が複雑に絡み合うことによって、「チベット」や「横浜」といった地名があちこちから聞こえてくるわけです。お客さんも予想外の音楽に驚くと同時にとても楽しんだ様子。この曲が30年代に書かれたというのが信じられませんが、同じ路線の音楽として、現代作曲家のマリベル・デサーニュ Marybel DESSAGNES の「テクノスキャット」をマリオンのソロと全員で続けました。
昨日の反省をふまえて、コンサート全体をテンポよくひきしめていったので、かなりすっきりした仕上がりとなりました。コンサート前は「おもしろいんかな~?」と心配があったわけですが、お客さんの反応はとてもよく、曲が盛り上がるたびに大拍手と歓声。私もピアノの席から会場を見回すと誰もが笑顔で本当に楽しんでいる表情。毎回思うんですが、私日本のクラシックコンサートでお客さんがこういう表情で楽しんでいるコンサート見たことなかったんですよね。私がたまたま運が悪かっただけ?で、今回は特にテーマもユーモア、笑いですから、みんな微笑んでいるというより、本当に笑顔で聞いてる。しかも心底。音楽と笑いと拍手でとてもテンポよくコンサートは進みました。
そしていよいよラストの曲、オッフェンバックのオペラ「La vie parisienne」から「私は亡くなった隊長の妻」。亡くなった隊長というから悲しい唄を想像するところですが、まったくの間違い。イザベルという登場人物が話をでっちあげてコメディたっちで歌う曲なんです。この曲は2月のアメリカ演奏旅行にも使ったんですが、そのときは歌の先生であるイザベルが、このイザベル役で参加してました。そして今回はジュリという子がソロを務める段取りだったんですが、いろいろと問題があって途中脱退ということで、急遽えらばれたのはギエーム。そう男の子です。彼はテノールですが、ユーモアというテーマということもあって、彼がスカートに帽子をかぶって登場し、時々ファルセットの声でしぐさも女らしく、時々声も歩き方も男そのままといった感じで彼のアドリブにまかせコンサートをしめくくりました。
本番前の「おもしろいのか?」という心配はなんのその。みんな大喜びの楽しいコンサート大成功でした。その証拠に、France 3 の取材班は結局コンサートの様子を全部撮り、こういうコンサートや文化活動に慣れているであろう彼ら自身がすごく楽しんだみたいで、ニュースで流すだけでなく、コンサート全体を放送する機会を見つけます!とまで言ってた。勢いでコンサート後のインタビューをはじめ、ギエームをはじめ若者もみんなしゃべることしゃべること。
このリラックスの様子はさすが南仏人ですよね。
セドリックなんてあんた何をそんなしゃべってるの?とつっこみたくなるほどしゃべるしゃべる。まあ、それもみんな自分たちのしたことに満足して、自分自身楽しんだからでしょう。
これで彼らの今年度の活動はおしまい。さっそく話は来年度の活動に移ります。そして彼らはバカンス一直線!私はまだすぐにバカンスではないけれど、着々と近づいてきてます!
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