数か国語も自由に操る人に出会うたびに、すごいなあ、いいなあって思います。私の周りにはけっこういます、4か国語、5か国語話せちゃう人。
本当のバイリンガルも、結局は稀ですよね。母国語はペラペラだけど、もう一方はほんの片言、というバイリンガルはたくさんいますが、二言語を同じように扱える人こそがバイリンガルですから。
私の語学力はというと、小学生のころから漠然と、「将来は数か国語を操る自分」をイメージしていたので、それなりにできるときに習える言語には興味をもってやっていました。習えた言語というのが、英語、フランス語、イタリア語、そしてドイツ語。なぜか本当にドイツ語だけには興味がもてず、好きにもなれずさっさとやめてしまいましたが、好きだったのは実はフランス語ではなく、私はイタリア語を結構熱心にやっていました。母音中心の発音が、日本人にとったらとっても楽ということもありますが、話してると楽しくなる言語とでもいいましょうか、今でも好きです。けれどかつて習ったことはほぼすべてといっていいほど忘れてしまいました。10年間フランス語習得のために集中したからしょうがないですね。
小さいころからやっていた英語にいたっては、フランス生活をしているうちに恥ずかしいほどにすっかり落ちました。読解力は今でもあるけれど、スピーキング力がまるでだめですね。すべてはフランス語の発音のせいです!と言い逃れをしておきます。
今となっては英語の発音を身につけるのは夢のまた夢のように思いますが、イタリア語に関しては少し気合を入れて勉強したら意外と簡単に回復できるような気がしています。一応音楽畑に身を置くものとして、フランス語とイタリア語ができたらやっぱりいいでしょうね。早く時間をみつけて勉強しなおしたいと思ってます。
英語のスピーキングを勉強しなおして、イタリア語を勉強しなおせば、4か国語話せますと言えるようになるでしょう。最近ふとスペイン語を身につけないといけない必要性がふらっと出たことがあって、 「それはいまさら無理!」と反応してしまいましたが、プフコワパ?(why not?)
数年後には5か国語しゃべれる自分になってみたいですね。
私のフランス語力はというと、大学とかでフランス語かフランス文学を専門に勉強した身ではない者としては、おかげさまで読み、書き、話す、聞き取り、まんべんなく身についたと思います。
専門には勉強してないけれど、第二外国語として一応授業も受けたし、フランス音楽を専門にした時期もあったし、フランスに来ると決めてからはそれなりに会話レッスンにも通ったし、こちらに来てから一応フランス語で論文も仕上げたので、読み書きもそれなりの実践も踏みました。
スピーキング、ヒアリングといえば、予定外にしてフランス人社会に放り込まれたからこそ。
やはり外国語はネイティブたちに囲まれて、必要にせまられてこそ磨かれていくものだと思います。
きちんとしたフランス語には届かなくても、別にそれを専門としてない身なので、肝心なのは向上したいとする意識だと、私は気楽にかまえています。
インターネットのおかげ、海外旅行、海外留学の普及で世界が近くなったとはいえ、外国語をマスターするのはやっぱり簡単なことではないと思います。まあ、ジェスチャーを交えながらでもいいから、相手とコミュニケーションがとれたら、とりあえずはよいものだと思っています。けれど「話し合い」を必要とする場合はやっぱりそれでは不十分ですよね。とくにフランスのような国では、とにかく自分の考えを表明して相手に伝えるのが常ですから、フランス社会で生きるには言語力がどうしても必要になります。逆にいえばフランス社会に入ってもまれて苦労しながら叩き上げられるというものだろうと思います。
周りの日本人のフランス語力をみていると、滞在年数に比例するものではないとすぐにわかります。どのようにフランス語を習ったか、どのような生活をしているか、そして誰とフランス語をしゃべってるかによって、当然、身についた力は変わってきます。
外国語習得のためによく言われることの一つが「外国人の彼氏彼女を作ること」とありますが、私に言わせるとそれは全くの間違いです。どころか、そうすることで外国語が身につくのが大幅に遅れるように思います。というのもやっぱりカップルでは愛情やらジャスチャー、ボディータッチでカバーされる部分が多すぎるからです。このパターンでは、文章ができない、彼氏彼女以外の人との話しあいというのがもてない語学力になりがちです。
外国語習得のために私が自信をもって断言、お勧めすることが二つありますが、まずは、「日本語が全くできない外国人の同性の仲のよい友人をもつこと」です。
もちろん、仲の良い友人という時点で、気があうだけのコミュニケートが十分にとれていないとだめなわけですが、人間同士、最初のフィーリングというものを信じて間違いはないと思います。私の場合、フランスに来てすぐにであった女の子と、それはもう気が合って一年の間いっつも一緒に過ごしてました。
私たちの場合、彼女が声楽を勉強していて、私がピアノを弾けたことで、音楽という共通語があったことに助けられたというのも事実です。
それにしても、彼女と昔話をするたびに、私がフランス語に苦労していた時代に、よくもあんなにしょっちゅう二人で大笑いしたものだと驚かされるのです。10年たった今でも思い出すだけで涙がでておなかがいたくなるような笑い話がたくさんあります。片言ながらも、私はがんばって四六時中口からフランス語を発してたんでしょうね。彼女にはおもしろいことも、そして厳しいこともたくさん言いました。ろくにしゃべれないくせに何をえらそうに、と、我ながらつつきたくなります。
フランス語の難しい点の一つに、書かれる文字と発音される音とのギャップがあります。読み方に一定のルールはあるのですが、それに慣れるまではなんでこんなにも発音しない子音が並んでるんだと疑問に思うものです。そしてリエゾンで知られるように、言葉と言葉をくっつけて発音することもしょっちゅう。ですからフランス語習得には聞き取り訓練がとても大事だと思います。
フランスに来た当時、私はいつも小さなメモ帳を携帯していて、わからない文章、単語を聞くたびに、とにかくそれをカタカナでメモっておいて、家に帰ってから夜、フランス語の辞書を引きながらそれぞれの単語を見つけるという自発トレーニングを行っていました。下手したら一つの単語かと思ったものが、三つの単語からできた表現だったりするのです。毎夜毎夜新しい発見をして一人喜んでたのもよい思い出です。
人から教えられるものをそのまま受け取るだけでは、なかなか頭にインプットできませんが、自分で発見したものはすぐに頭に記録されます。
確かに全くの初心者には難しすぎますが、今フランス語を勉強している人にはお勧めのトレーニングです。実行すれば絶対に効果ありますよ。
あと私がお勧めする二つ目の習得方法は、手に入れるのが簡単ではない環境ですが、「仲がとくによくないけれどしょっちゅうしゃべる相手を持つこと」が語学力磨きには理想でしょう。
私はフランスに来て8か月後には仕事をし始めたことで、フランス人相手にしゃべらざるを得なくなりました。 同僚たちと接するうちに、自分が必要とするボキャブラレリーを学ぶことができました。ミュージシャンに必要なボキャブラリー、表現はもちろん、教える立場にある者がよく使うフレーズ、子供を相手に話す場合、大人を相手にする場合の違いなど、個人を相手にするときと、グループを相手にする場合の違いなど、いろんなことを見ながら聞きながら学びました。
よく忘れがちなことですが、言葉というのはやっぱり一人一人の人格が反映されるというか、一人ひとりによって違う個人的なものです。私は最初からこのことを強く意識していました。私には私の日本語での話し方があるように、友達や先生や家族など、それぞれの人に特徴があります。フランス人にだって人それぞれの話し方があります。私はそれをいつも注意深く観察していました。フランス語には日本語にあるような女性と男性による違いはありません。けれど年代、男女、職業、社会的立ち場、またシチュエーションによって様々な特徴があります。
私はなるべく私のキャラに合うフランス語を身につけるようにしました。私というものが日本人にもフランス人にも同じように伝わるように。
フランス語を教えてる人にこの話をしたら、「そこまで考えてる人はなかなかいない」と言ってましたが、文法的に正しいフランス語を学ぶこと同じくらいに大事なことだと私は思っています。
一度フランス語がかなり上手な日本人女性と会いましたが、彼女は大学でフランス人学生と仲良く積極的に交流していましたが、彼女が身につけたフランス語は若者特有のフランス語で、しかもはっきり言って汚い言葉ばかりでした。私は行儀しつけにうるさくない性格で、ざっくばらんなしゃべり方をするタイプなので、その私が下品というのだからよっぽどのものです。もし彼女が日本語でも汚い日本語しかしゃべれない人だったらともかく、彼女が日本語でしゃべるときはきちんとした丁寧な言葉でしゃべる人だったので、人ごとながら残念だなあと思ったものでした。
私はフランス生活10周年を迎えて、10年を一区切りとして考えると一つのサイクルが終わって、二つ目のサイクルに入っているわけです。
フランスに来てからはフランス語に関して実践ばかりだったので、ここら辺で改めて文法などを見直すのもいいかなと思っています。
先ほど書いた仲が良い女友達である彼女と私は、彼女が学業のためにリヨンに旅立ち、私が仕事を初めて忙しくなってから、しばらく連絡も途絶え気味になっていいたこともありました。が、
彼女が歌手として大きな仕事をゲットして、世界の舞台で歌い出してひと段落した今、同じ町には住んでいないけれど二人の距離がまたさらに近づいてきたよう
に思います。それは私が10年間がむしゃらに仕事ばっかりしてきてふと一休みしたくなったことと、彼女がハイレベルの学業を終えてデビューしてがむしゃらにくる仕事をこなしてきてふと一休みしたくなったことが重なったからともいえるでしょう。
彼女との思い出=私のフランス生活の出発点ですから、彼女と会う度に、フランス生活の原点に立ち戻ったような新鮮な感覚も覚えます。
私の周りにはフランス生活40年という大ベテランたちが何人かいますが、 祖国日本とのかかわり方は人それぞれ。
私がこれからどこで生活するようになるかはまだわかりませんが、もし私があと14年フランスで生活をしつづけたとき、日本での生活が25年、フランスでの生活が25年で半々となります。
これまでの11年ですでにたくさんのような驚きを経験体験してきたので、あと14年もというと、すごい長い年月の様に感じます。
フランス語に関しては、この11年での上達は大きかったと思うので、今後11年生活を続けたからといって二倍上手になるとは思いません。でも毎日毎日常に進歩を心がけることが大事ですね。