発音は「ナンポフトクワ」。n'importe というのが、「重要である、大切である」という意味の動詞importerの否定形からきていて、疑問詞とセットになることで不定代名詞を作って「どんな何々でも」といった言葉になります。
例えば、「誰か」という疑問詞「qui」と一緒になると「n'importe qui」で「誰でも」という意味に、「どれか」という「lequel」と一緒になると「n'importe lequel」で「どれでも」という意味に、そして「何」という意味の「quoi」と一緒になると「n'importe quoi」で「何でも」という意味になります。
ここから発展して「n'imoorte quoi !」と単独で言うと、なんでもかんでもありでめちゃくちゃな状態をうけてあきれる様子を表すことになります。
日々の生活の中で、フランス文化の中で理解できないこと、フランス人のメンタリティーで理解できないことなんかは多々あるわけですが、ここ最近で「n'importe quoi !」とついついさけんでしまった、ほとほとあきれるお話が今日のネタです。
それは今フランス全土で熱心に繰り広げられている年金システムの改正に対する反対運動の中でおこったできごと。
年金というシステムを存続するためには他に方法がない、必要必至の改正だと主張する政府に対して、労働期間の延長を強いられたり、おさめる積立金の増額を強いられる一般労働者が真っ向から反対しているわけです。
そこへ、ここ数年で悪化が続いている失業率、とくに若者の職なし状態が加わるものですから、「高齢まで働くこと=高齢者が仕事をキープすること=若い世代のためにポストが空かない」という図式が成立するために、あらゆる世代の人が反対しています。
そんな中、ストに参加する人々の若年化が注目されているわけですが、なんといっても高校生が年金システム改正に反対を表明してデモ行進に参加する姿がニュースでも連日取り上げられています。
だって、その数は半端ではなくって、全国各地で大多数の高校生が参加しているのです。
フランスでは数年前にも大学のシステムの改正議論や、短期雇用のシステムの強化の際に、多くの若者が立ち上がりました。
ストの国フランスでは大学生がストを起こすことはまったくめずらしいことではありません。彼らは大学を閉鎖、占拠してしまうので、その間、授業が行われないという事態に陥り、授業を普段通り受けたい学生と、ストに参加する学生の間の衝突も毎回見られます。
さて、高校生がストに参加するというのがどういうことなのか。
まず、彼らは授業に行く代わりに街で行われるデモ行進に参加します。
つまり、授業はボイコット。
それだけならまだしも、問題は高校生が自分たちの高校を閉鎖、占拠してしまうというところ。
この占拠のことを「ブロキュス」(blocus)なんて言ったりします。
大多数の生徒が授業に来ないという状態をみると、教員たちは学校から出ます。だって、閉鎖されてしまうということは、中から外にも出れなくなるからです。
さて、フランスにも私立の学校は存在します。
日本に比べると比率はだいぶ少なくなりますが、モンペリエにも私立の小学校から高校まであります。
なぜ私立学校に行くかと言うと、フランスでは政教分離が徹底されていて、とくに教育現場での宗教からの独立がベースにあるので、親が子供にキリスト教教育を受けさせたい場合、公立学校ではなく、教会と一帯となった私立のキリスト系学校にいかせることになります。何も親が敬虔なカトリック信者というケースだけでなく、単にキリスト教文化の伝統と規律の中で教育を受けさせたいと思う親がたくさんいます。
一方で、特にキリスト教教育に興味はないけれど、公立学校ではあまりに教員のストが多いために、共働き夫婦は学校が閉鎖になる度に子供をどこに預けたらいいかで一苦労するわけです。それにうんざりした夫婦が、ストが極めて少ない私立学校に子供を入れたがるというケースがかなりあります。
小学校、中学校まではかなりある私立学校も、高校になると結構数が減ります。
モンペリエに限って言えば、普通規模の普通科私立高校というと2つだけです。
私立高校では教員のストが少ないだけでなく、生徒がストに参加して学校を閉鎖、占拠というのはめったと起こりません。
今回の年金システム改正反対運動でも、私立高校の生徒の大半は、普段通り授業を受けるつもりで学校に行きました。
しかし!
何が起きたかと言うと、自分たちの学校を閉鎖して占拠した公立高校の学生たちが、私立高校にまでやってきて、閉鎖、占拠したというのです。
挙句の果てには、学校の門の前にあるごみ箱などに火をつけたりまでして、、、。
そのせいで、この学校の生徒も教員たちも学校外に出て帰宅を余儀なくされたわけです。
私はピアノの生徒からこんな話を聞いて、ついあきれて物もいえなくなっちゃった私が発した言葉が「ナンポフトクワ」なわけです。
人権の国フランスでは自分のもつ権利を誰もが主張するわけですが、私に言わせれば、それが行きすぎて他人の権利に関してはお構いなしなところがあって、権利の主張はするけど、人の権利の侵害はする人たち、、、と時おり思わずにはいられません。
今回のケースはまさにそのいい例。
しかもうっぷんのたまった若者の悪ノリも半分以上あるのが現実でしょうから、授業を普段通り受ける権利を妨害された生徒たちはただの被害者ですよね。
いかなる理由であろうとも、客や生徒に迷惑が及ぶスト行為にはそもそも反対の私はやっぱり日本人。
「最近の若者は、、、」とあきれる私はただ年がいってきたということなのか?
でも実は私、ここでは外国人でありながらも日本の年金システムには貢献せず、今のところフランスの年金システムに参加しています。ですからこの年金問題、私にも大いに関係する大事な問題。
でもねえ、、、。
どうも理解に苦しむお話でした。
ちなみに、今回の年金システム改正反対運動はまだまだ続行中です。
この一週間で何日もデモ行進が実行されましたが、明後日の火曜日もまた大規模なデモ行進が予定されています。というのも水曜日に国会で採決がとられるから。
最後の最後まで反対を訴えて、新しい法律の成立を妨害しようというのが狙いです。
交通網の乱れはもちろん、ガソリン不足騒ぎも問題になっています。
どんな結末になるんでしょうね。
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