2009年12月14日月曜日

真心いっぱいの傑作

去年の秋ごろの話。

冬が近づくにつれて「なにかあったかくしてくれるものが欲しいな~。」と思っていたのです。例えば大きなプーケかポンチョか。ピアノのレッスンをしてるときは数時間基本的にイスに座ってるだけでじっとしているので、すごく寒いんですね。ただでさえ、日本ではありえない悪条件で労働している私。毎年のことながら、病気になるかならないかの戦いを、レッスン室のせいでしています。

で、ある日、編み物縫物なんでも上手な友達Aさんに何気に聞いてみました。「ね~ね~、ポンチョとか注文してみてもいい?」って。
というのもAさんはこの趣味であり特技である洋裁を仕事とすべく思案模索しているので、お友達価格とはいえ私が支払うという前提でだったら、何か作ってくれるかな~と思ったからです。

彼女は「ポンチョなんて大作はまだしたことがないけど、やってみたいと思ってたし、お試し試作ということでよければ、、、」と引き受けてくれました。彼女が調べてモデルなんかを提案してくれて、毛糸も一緒に選びに行って、何も現実を知らない私は「(去年の)年末には出来上がるのかな?」なんて思ってたんです。

ところが、ポンチョというのは大きな作品で、彼女が選んでくれたデザイン・モデルはとてもハイレベルな本格的作品だといことを後になって私は理解したのです。
実は私、セーターを頼まずにポンチョを頼んだわけですが、セーターを編むのは大変だという認識が一応あって、一方「ポンチョというのはマフラーを数枚分つなぎ合わしたようなもの」というすごい誤解をしていたんです。太めの毛糸でざっくざっくと編んでいったらできあがると簡単に考えていたんです。
Aさんが「遅くってごめんね~。」とか言い出したからふと考えてみると、彼女のアドバイスに従って私が選んだ毛糸はどちらかと言うと細かった。しかも彼女が選んだデザインの編み目はとってもキメの細かい複雑なものだった。かろうじて、私は全部一色同じでいいからといったのがよかったけど、とにかくとてもおしゃれで高級上質の品を注文してしまっていたことに、あとになって気がつきました。

それからは、Aさんが「遅くて申し訳ない、、、」とか「ごめんね、もう春になっちゃったね」とか言うたびに、「変な大作を頼んでしまって、さぞや気になってるだろうし、気も重くなってるだろうしごめんよ~!」と謝りっぱなしになり、ちょっぴり罪悪感と後悔がおそってきました。
夏になるともうお互い笑い話として、「まあ次の冬が終わるまでには渡せるかな~、もらえるかな~」と言い合っていたけど、私としては負担をかけてはいけないと思って、忘れたわけじゃないけど話題にはださなくなっていました。

そこへ、今年の11月になったころ、Aさんから「ポンチョできたからお届けにいきたい。」と言ってきてくれたのです。思いがけずに「すでに完成」という言葉を聞いて驚き喜ぶ私。しかもうちまで届けてくれるというから、こちらも恐縮しつつ、楽しみにしていました。

「ちょっと間違えちゃったところがあるんだけど。。。」と遠慮がちに見せてくれた完成品を見て、私は息をのみました。だってすごいんだもん。

ほら、こちらです。




この重量感を感じてもらえるでしょうか?

首の部分がタートルみたいにもなるし、この微妙なカーブ具合といい、そりゃマフラーのつなぎ合わせなだけなわけがない!
そして編み目も何種類もあって、模様がしっかりとあって、etc.etc.
しかも羽織ってみるとあったかいのなんのって。

一体どれだけの時間をかけて、どれだけの忍耐と苦労をもって作ってくれたのでしょうか。
最初からお友達価格とは言っていたけど、やっぱり費やしてくれた時間を考えるだけでもそれなりには代金を払わないとこちらが恐縮していまいます。だから私が毛糸の材料費は別で、「こんだけでは少ないだろうけど、、、」と言って差し出したお金を見て、Aさんは「そんなの多すぎるよ!」と言って受け取り拒否してきたのです。といっても、彼女の労働時間を考えたらほんとに不当な料金を提示したんですよ私。で、二人であーだこーだとやりあいをしましたが、結局、Aさんの「ほんとにほんとに、そんなにいいから。」というセリフに私がおれて、ありがたく超超お友達価格でこの特製お手製上質ポンチョを受け取ったのでした。

一年前に取り掛かり始めてくれたAさん。
このポンチョのおかげで、彼女は旦那さんのセーター作りにとりかかれず、私は旦那さんにも「私が先にすごいもの注文しちゃったばっかりにセーターお預けになってごめんね~。申し訳ない。。。」と平謝り。

私自身は縫物は必要に応じてすることはあるとしても、手編みで何かを、しかも誰かのために編むなんてしたことないし、やってみようと思ったことすらない。お恥ずかしながら。

市販の機械大量生産のセーターなんかとは違って、手編みというのはやっぱり手編み。普通に買えばとても立派な値段です。それをしっかりと根気よく編んでくれたどころか、私のために編んでくれたかと思うと、その真心愛情に感動しちゃいました。

これでもうピアノのレッスンのときに「寒いよ~。。。」と身体をふるわすこともなくなるし、しかも生徒たちに羽織って見せて「これ友達が手編みでしてくれたんだよ~。」と自慢できちゃう。楽しみです。

この真心には、私なりの私ならではの何かでお返しをしないとね。

0 件のコメント: