2010年3月7日日曜日

ベンジャミン再び!

去年の夏、ラジオフランスのフェスティバルで出会い、仕事を一緒にさせてもらった若手イギリス人指揮者ベンジャミン・エリンくん(Benjamin Ellin)が今週モンペリエにやってきました。
今週末行われる近現代音楽のコンサート・シリーズの中の土曜日のコンサートを指揮するためです。

前々から「モンペリエにまた行くよ!」と知らせてくれて互いに会えそうな時間をみてあったので、水曜日の夜に再会となりました。
お互いの近況報告から始めたわけですが、いやはや、彼の活躍ぶりには驚かされます。
去年の夏のブログにも書きましたが、彼は今日では希有な作曲家&指揮者。しかもすごいことに、そのどちらの活動においても着々にインターナショナルなデビュー+活動を広げているんです。

ざっと紹介するとして、指揮者としてはすでにイギリス各地はもちろん、ロシア、イタリア、リュクサンブール、フランスで指揮をしていて、この先北米にも進出予定。で、なんと日本デビューも決まったそうです!
群馬交響楽団との共演。その誕生秘話が映画やテレビのドキュメンタリーでとりあげられたりしたオーケストラですね。今年の9月にとっても密度の濃い曲目でのデビューです。

プログラムの案内のサイトはこちら
http://www.gunkyo.com/cteiki.php?NE=2010

日本の演奏家、そして音楽ファンにどう受け止められるのか。楽しみですね。

そんなふうにあちこち飛び回る活動をしながらも、ヨークシャー州にあるスレイスウェイト(Slaithwaite)の演奏団体のディレクターもしていて、定期演奏会などの指揮をしています。

かたや、作曲家としての彼の活動はさらにめざましいものがあります。
すでにあちこちから作品の委嘱をされていますが、去年、世界的に有名なアメリカのバーロー賞を勝ち取ったことで、ニューヨーク・フィルハーモニーの首席トロンボーン奏者のための作品を作曲して、それが来年4月ニューヨークで初演されることが決まっています。他の作品のカナダでの初演も数ヵ月後に控えているし、この夏、フランスのとあるフェスティバルでも彼の作品が演奏される予定です。

演奏家の道以上に厳しいものがある作曲家への道。作曲家を志して本当にそれで生計をたてれるまでに至る人が実際いったい何人いるのでしょうかというこの世の中で、彼の年齢であちらこちらから委嘱を受けるというのはすごいことだと思います。

しかし、正直言って、彼とおしゃべりをしているとその実感がわきません。
私はまるでかつて仲のよかった同級生が今や立派なミュージシャンとなって再会した、みたいな感覚でおしゃべりしてしまっていますから。

しかも彼は教育者としても熱心に活動をしていて、若者やミュージシャンの卵たちに積極的に関わっていっています。
そのため大都市ロンドンにある二つの学校でディレクターを務めています。

そんな大活躍のベンジャミンを前にして、思わず聞いてみたくなってしまった私の質問。
「一体どうやって日々生活しているの?」

だってただでさえ仕事がいっぱいなのに、各地を旅行する生活で、かつ、作曲にじっくりとりくむ時間も必要なんですから。
単純かつ根本的な私の質問に彼も苦笑してましたが、ま、少しずつ選択を迫られていくということでしょう。彼のように各地から声がかけられると、どうしたって、常時常勤のポストを保つのには無理がでてきますから。
幸い、彼には優秀で心強いマネージャーがついています。パリに事務所をもつ音楽事務所で、名だたる音楽家たちを抱えるスーパー音楽事務所の一つ。音楽家と音楽マネージメントの関係は、マンガ「のだめ」でもかいまみれると思いますが、とても大事な関係です。

そのマネージャーさんのおかげもあって、ほんと、めざましい活躍のベンジャミン。
私よりも若い彼の近況報告を聞きながら、私は「わお~!」、「すご~い!」、「やったね~!」の連発。ほんと驚かされてしまいます。

ま、すべては彼のオープンマインドでポジティブな姿勢から生まれてるのでしょうが、この活躍ぶりも今回新たに知った彼のエピソードを聞いて納得。

実は彼、かの有名なイギリス皇太子チャールズ王子からのサポートを受けていました。そんなビッグスポンサーがなぜついたのか?好奇心旺盛な私はついつい質問してしまいました。「イギリスのプリンスって、あのチャールズでしょう?!」みたいに。

すると返事はこうでした。
「実は自分で彼に手紙を書いたんだ。」って。

今から数年前、彼がまだ学生だったころ。音楽の勉強を続けたくてもお金がなくて方法がみつからなかった。すでにいくつかの奨学金はもらっていたけれども、もっと勉強するには足りなかった。そこで皇太子に直接手紙を書いたんだ。「こういうことをしていますが、今後こういうことをしたい。」と。
もちろんダメでもともとと思ってたんだけど、ある日、大学に行ったら「あなたに電話が入ってますよ。」と言われて事務所に行ったら、バッキンガム宮殿からの電話だったんだ!

と思い出を語る彼。
いや~、すごい話ですよね。
親の援助を一身に受けて音楽の勉強を続ける人がいっぱいいますが、この彼の行動力。
この行動力、活動力に彼の成功の源があるんでしょうね。

でも、彼としゃべっていて、今、彼に起きていることはすでに「成功」と呼んでいいものではあるのだけれど、実際にはこれは今後のキャリアのスタートでしかない。
彼自身、こんなに忙しくなってきてしまってるけど、ありがたいことだし、今後これが続かないといけないし、さらに発展していかないといけない言っています。

私なんかはこれから先、彼が活動の場をますます広げて輝かしいキャリアを築いていってくれるよう、祈って応援するばかりです。

最後に、今回「さすがだな」と思わされたこと
それは彼の語学力。
大人数を相手にしたコミュニケーション能力については、昨年仕事で一緒させてもらったときに垣間見ていますが、数か月ぶりに会ってみて、彼のフランス語力の上達にはびっくり。たった数カ月で目を見張るものがありました。勉強するとは言っていましたが、彼の忙しい仕事のスケジュールを考えると、一体どうやって時間を見つけているのか。彼は謙虚にフランス語はまだまだダメ、イタリア語もドイツ語もロシア語も片言だけと言っていますが、今のフランス語はすでに片言の域を飛び越えています。

こうして世界を飛び回って、そのうち5、6ヶ国語はペラペラ自由自在に操るようになるんでしょうね。

指揮者には数ヶ国語を身につけることは必須でありますが、その過程を見ているとやっぱりすごい。

いやはや。
ベンジャミン、応援つづけます!

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