2008年4月25日金曜日

L'Indien des neiges 3

ピアノとの練習も終えて、ついに水曜日にはチェリスト達がやってきました。彼らは 「L'Octuor de violoncelles de Beauvais」 という、とてもオリジナルなチェロの8重奏団です。そしてなんとこの日、作曲者である Jacques Rebotier 氏も様子をみにやってきたのです。練習もいよいよ大詰めの雰囲気。チェリストたちも舞台上にしっかりおさまって稽古です。




作曲者 Rebotier氏は私の予想外にも、背の高くないムッシューでした。CDのジャケットにのってた顔写真だけみたことがあって、勝手に大きな人を想像してたんです。。。一応練習ピアニストだったもので、紹介してもらうと、「素晴らしい仕事をしてもらってありがとう」と言ってもらいました。そういえば、私も作曲者の前で作曲家自身の作品を演奏した経験といえば、我らがボス、ウラジミールのオペラだけで、それ以外では、作曲者の作品に取り組んだことがあって、さらにお会いする機会を得たのは、フランス人作曲家のMichel Damaseに続いてこのRebotier 氏が二人目。改めて考えるとそうそう機会もないものですね。
このRebotier氏、何がすごいかというと、彼は何が本職なのかと思うほど、いろんなことを第一線でこなしているすごい人。作曲家かと思えば、作家としても詩人としても、さらには演出家としても活躍。こんな話を聞けば、音楽はちょこっと横手間で書いた軽い音楽家と思うのが大間違い!彼の音楽はほんものの現代クラシック音楽といっていいのか定義に自信がないので少し戸惑いますが、精密に、厳密に、練って書かれた楽譜なのです。それにチェロ8本のためというだけあって、チェロに関する知識も半端じゃこんな楽譜書けませんよね。チェロの演奏法、演奏技術、チェロという楽器がだせる音を網羅した音楽になってます。
チェロの弦の間に定規みたいな、バチのようなものをはさみ入れて、それを「びよ~ん!」と振動させつつ、さらに弓で弾く、とか、いろんな技が満載です。こちらがその楽譜。



私はこうしてピアノに向かってたわけですが、ページをめくればわかります。


そう、練習ピアニストとしてなにが大変だったかというと、実はピアノ用に編曲された楽譜がなかったんです(涙。。。)歌とチェロのための楽譜しか存在しなくて、この仕事に取り掛かる前にボスであるウラジミールに言われたのは、「自分でアレンジできるか?」でした。「うん、まあやれることはやってみるけども、、、」と言いながら、結局文字通り、「やれることをやってみてます」という状態でピアノジェネラルまで終えました。拾える音を拾って弾きつつ、ピアノたたいたり、変な不協和音してみたり、、、。



みんな私の仕事に「よくやった!」と言ってくれたけど、やっぱり音質的にも、実際の聞こえる音の面でも、8人のチェリストがそろったらそれはすっかり別のもの。チェロ特有のやわらかな深みのある音に包まれて練習を開始すると、「ああ、作曲者はこれを得たくて書いたのだな」と納得。
この楽譜はリズムの面でもいろいろと複雑で、かつ、歌詞というか、台本、テキストのフランス語のもつリズムを尊重しているので、聞いてみるとすんなりと入る。ほんとよく書けてます。



さて、話をこのチェロのグループに移します。作曲者は彼らのためにこの楽譜を書いたそうですから、リーダーのJacques Bernaertさんなり、もともと親交もあったのでしょう。リーダーを筆頭に、8人のうち5人は、7年前の初演でも演奏した人たち。メンバーの半分が演奏経験済みなら大丈夫だろうと思いたいところですが、やはり難しい楽譜なだけにそうも簡単にはいかない。。。楽譜が精密にできてるだけに「正確さ」必須の音楽。8人での練習はもちろんしてきているだろうけど、彼らにとって、今回の指揮者であるウラジミールとは初対面。彼の指揮さばき、音楽の表現の仕方などを早く理解してなれないといけないし。まあ、何はともあれプロだし、なんとかなるでしょう。。。

彼らはこの編成もオリジナルだけど、彼らのチェロもオリジナルなんです。下の写真でみえますか?普通のチェロではなく、特別にデザインされたおそろいのチェロで演奏するんです。



まだまだ改良すべきこともありますが、とにかく作曲家であるRebotier氏が私たちの仕事、準備に大満足されたからよかった!彼は水曜、木曜と二日間、練習を見に来て、私たちにとったら、彼が出すちょっとした意見やアドバイスから、作曲者自身の描いたものとか意図とかがわかったし、彼は彼でうれしそうに 「Merci beaucoup! Bravo!」 といって帰られました。

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