一晩あけた今日は、ちょっと落ち着いてこのオペラjrという団体を紹介したいと思います。
正式名称はAction Musique Opera Junior - Centre de formation et de création artistique - といい、6歳から25歳の子供と若者を対象とし、現ディレクターであるウラジミールが1990年に作った組織。このウラジミール、Vladimir Kojoukharov というブルガリア出身の人で、ソフィア音楽院とパリのコンセルヴァトワールで学んだ指揮者兼作曲家。1985年、彼がまだパリで活動していた時代に、文化庁の依頼によって、パリとパリ周辺の子供たちによるオペラを制作するという任務を得ました。そのときに総勢1200人の子供たちと共に、彼の自作オペラ「Paradis des chats」をパリ劇場で公演して、音楽的にも芸術的にも、そして教育的にも大成功をおさめたそうです。この出来事をきっかけに、彼は子供や若者の表現力の可能性とそれを拡大させることに興味をもち、ただ歌と音楽だけでなく、舞台上のスペクタクルとして、しかもプロフェッショナルな環境で発表する場を与えることをスローガンに活動を始めました。そして1990年に、モンペリエのオペラ座が彼の計画を実現、実行させるためのパートナーとして登場。こうしてここモンペリエに、クラシック音楽だけに枠をとどめず、さらに歌うことや音楽だけにとらわれず、身体を使った表現も学ぶというオリジナルな団体が誕生しました。
フランスにはクラシック音楽を学ぶのにはコンセルヴァトワールがあり、さらに子供の合唱という分野では、教会少年合唱団に由来し、現在は各街のオペラ座や劇場内にあって、ソルフェージュと歌を学ぶ教育機関のメトリーズがありますが、いずれも国や町が運営する学校であるのに対し、オペラjrはあくまで民間のアソシエーションであって、しかも活動は学校外。普通の学校の時間帯に授業をしているコンセルバトワールやメトリーズとは一線を画している点でもユニークな存在です。
現在、9歳から16歳までの子供を対象としたChoeur d'enfants、16歳から25歳の若者を対象にしたGroupe Vocal、 その準備グループといった感じのPré-Groupe Vocal。そして6歳から9歳のちびっこを対象にしたPetite Choraleという四つのグループが存在し、Choeur d'enfants とGroupe Vocalがメインとなって、それぞれコンサートやオペラ、ミュージカルなどのスペクタクルを発表して好評を得ています。 特に評判がいいのは子供たち。本物のオペラで子役が必要な時は、このグループ全体あるいは選ばれた子が出演します。有名な演目では、モーツァルトの「魔笛」やビゼーの「カルメン」に、重要な子供パートがありますね。それに5月にはドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」の中でイニョルド役として、出演が決まってる子もいます。このオペラでは、子役のソロまであるので大変重要。
事務の人を別として、現場で実際に指導にあたるスタッフはというと、実際に子供や若者に歌を教えるChef de choeur としてヴァレリーがいます。彼女がオペラjrで働きだしてかれこれ8年以上になると思いますが、オペラjrの成功には彼女の働きが欠かせません。そして発声指導のためにギウメットとイザベルという二人の歌の先生がいます。Groupe Vocal の若者の中には、もっと本格的にクラシックのアリアや二重唱などを学ぶために Atelier d'Etude du répertoireといってレッスンを受けてる人がいますが、彼らのためにはChef de chant として超ベテランのジェルメンヌがいます。彼女達は実際に指導しているのに対し、伴奏ピアニストである私は、練習を支えるためのアシスタントみたいな感じですね。場合によっては他にも何人かピアニストがいますが、ここのところ私がほとんどすべての計画に参加させてもらっています。そして音楽以外に身体表現や、演劇の先生がいて、さらに各計画、舞台ごとに、演出家をはじめとするアーティストたちが加わって、みんなで作り上げるのです。
こちらがウラジミールです。いつの写真だか知らないけれど、彼のプロフィールによく使われています。彼は創設者として現ディレクターとして、実際の指導、教育の現場から、事務的なこと、予算の問題、スケジュールの問題、いろいろ政治的なことまですべてを仕切ってますが、何をかくそう、今日現在73歳なのです! 彼についてはいろいろ話もありますが、基本的に、私は彼の教育的アイディアや発想にすごく共感するし、73歳という年には絶対に見えないエネルギーとバイタリティーには恐れ入りました!状態です。
今現在、私はオペラjrと大きなしっかりした終身契約を交わしているわけではないので、いつまでつづくかわかりませんが、それでもこうして出会っただけ、何かの「ご縁」があったから。彼自身、ブルガリア出身でパリにでて、そしてモンペリエに活動上のパートナーを見つけたということ自体、「ご縁」があったからこそ。そして彼の1985年に書いたオペラ「Paradi des chats」は、なんと日本の昔話を台本にして彼が作ったんです。当時の彼には特別親しい日本人がいたわけでもなんでもなく、それが今はこうして日本人ピアニストを雇ってる。私にとったらブルガリアは「ヨーグルトの国」、彼にとったら日本は「paradis des chats の国」だったのに、本当に御縁の不思議です。
こちらはヴァレリー。彼女はカリブ海のフランス領であるマルチニク出身で、絵にかいたような8頭身だからすごい。となりに4頭身のウラジミール(ごめん!)と4頭身半のアジア人の私(笑)がならぶとほんとに納得。各民族の身体的特徴の違いといったら!同じ人間でもこんなに違うの?!って。
でもこのヴァレリーは、ただ身体的に華やかでゴージャスなのではなく、その全身から発散されるプラスエネルギーのすごい人です。日本人女性とはまた全く違って、薪を縦に割ったような性格と言いますか、裏表のない人で、媚びるところの一切ない、気持ちのいい人です。二人の娘の母でもあって、優しさもあり、配慮とかもできる人。そして何より人を惹きつけるカリスマ性がありますね。この彼女のおかげで、子供も若者も厳しいながらもいいムードで練習ができ、さらには演出家や指揮者など外部からくるアーティストとのコンタクトもとてもよく、いつも素敵なつながりができます。ウラジミールしかいなかったら、こんな風にはいかなかったことでしょう。
でもこのヴァレリーは、ただ身体的に華やかでゴージャスなのではなく、その全身から発散されるプラスエネルギーのすごい人です。日本人女性とはまた全く違って、薪を縦に割ったような性格と言いますか、裏表のない人で、媚びるところの一切ない、気持ちのいい人です。二人の娘の母でもあって、優しさもあり、配慮とかもできる人。そして何より人を惹きつけるカリスマ性がありますね。この彼女のおかげで、子供も若者も厳しいながらもいいムードで練習ができ、さらには演出家や指揮者など外部からくるアーティストとのコンタクトもとてもよく、いつも素敵なつながりができます。ウラジミールしかいなかったら、こんな風にはいかなかったことでしょう。
私が一番最初にオペラjrから仕事の依頼をもらったのは、今からさかのぼること4年半。私にとってのフランス生活二年目に入ったばかりの秋のことでした。その年に私はいろいろなことが重なって体を壊してしまったこともあり、その後しばらく今の半分くらいの仕事の量でしたが、ここ二年はオペラjrの全部の舞台にかかわらせてもらっています。だからヴァレリーともウラジミールとも、もうかれこれ4年以上のつきあい。それに仕事場の上司というか同僚と言うより、みんなで音楽を共有して舞台を作り上げるという仕事なだけに、「仲間」という感覚もありますね。英語で言う「チーム」が、フランス語では「Equipe エキップ」。最初は言葉の壁も、文化の壁も大きかったけれど、ちょっとずつ、今では私もエキップの一員と感じられるようになりました。
昨年の私のフランス滞在身分変更チャレンジのときは、二人とも強力にサポートしてくれました。そしてつい昨日、L'Indien des neiges の打ち上げの席で、ウラジミールが滞在許可の更新について質問してきたのでその話をちょっとしました。次の更新もなんの保障はなく、やってみないとわからないことに違いはないし、とれたとしてもまた一年更新なわけですが、オペラjrでは期限付きの契約(CDD : contorat durée déterminé) を更新してるだけの身なので、音楽学校での私の仕事のように、終身契約であるCDI: contorat durée indéterminé にしてもらえたら、成功する可能性が高くなるし、10年許可証にも近づけるんだけどな~、とちょっと言ってみました。まあどうなるかはわかりませんけどね。
こちらがオペラjrのサイトです。フランス語しかないけれど、よかったら覗いてみてください。
これまでのいろいろな舞台の思い出、特に今年の2月のアメリカ遠征演奏ツアーの時の様子など、お見せしたい写真がいっぱいあるので、また追って報告します。
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