前回の記事の続きです。
12月のLe Groupe Vocalのコンサートが、予定外にフランス語の歌ばかりになってしまったので、私が思いついたこと。
「日本語で歌ってもらう!」
オペラjrでは、9歳から16歳のグループ Choeur d'enfantsでだって、いつも必ずオリジナルの言語で、そして暗譜で舞台にたちます。ドイツ語、イタリア語、英語あたりはもちろん、ロシア語、ハンガリー語、ノルウェー語でだって歌ってきました。そして驚くことに、彼らのレパートリーの中には、10年ほど前から日本の歌が一曲あったのです。
それは大熊崇子さん作曲の「さくら」。
今から5年半前、私が初めてオペラjrという団体の舞台を見たときに、この曲を聴きました。フランスに来たてで、周りに日本人の知り合いもいなく、フランス100パーセントでがんばっていたときに聞いた曲。それまで知らなかった曲で、しかもフランスの子供たちが日本語で歌っていて、すごく新鮮で、印象に残ったのを覚えています。
そしてその数ヶ月後、このグループから仕事の話が来たのですから、ごえんの不思議。
日本人なら経験した人が多いであろう、小学校、中学校での校内の合唱コンクール。または市内の合唱コンクール。日本を一度離れてみるとわかるのですが、日本の音楽レベルは本当に高いんです。国際的コンクールで日本人入賞者が多いことから、世界トップレベルのプロフェッショナルのレベルの高さはもちろんですが、一般人の間での音楽の普及率がとっても高いんです。カラオケ文化があれだけ発達したのもみんな歌うのが好きだからだし、なによりも歌の上手な人の多いこと、多いこと。つまり音感が自然と発達してるんですね。
それは小学校、中学校での音楽の授業が充実しているからだと思います。もちろん近年、音楽や美術の時間がどんどん減ってるというのは知ってますが、それでも音楽を特に好きでもない子や、楽譜なんて見る機会がない家庭で育った子でも、なにかしら合奏だの、合唱だので参加し、ピアニカにしろ、リコーダーにしろ、楽器に接しているところがすごい話です。
そして合唱の話に戻すと、私の出身中学校の合唱コンクールなんて、みんな熱心に練習して、今思い出すだけでもたいしたレベルでした。学力のレベルも県内のトップをいく学校で、言ってみればきちんと取り組む真面目な生徒がそろっていた学校だったんですね。超少数派のちょっとぐれちゃった子たちも、しっかり合唱の中にはいって舞台にたってた姿が、いまでもほほえましい。
全国の小、中、高校に、それぞれ校歌があることだって音楽の普及率のレベルの高さを示してます。中には混声4部合唱の校歌だってあるわけで、それを普通だと思って歌っている日本の子どもたちはすごいです。
そんなこんなで、日本人作曲家は合唱曲の依頼、委託をよく受けて、たくさんの合唱曲を作曲している作曲家がたくさんいます。
さっき紹介した大熊崇子さんの曲は、私の時代にはまだあまり聞かなかったけれど、その後どの合唱曲にも彼女の曲が数曲入っていることを知りました。
フランス人はもちろん、オペラjrのメンバーだって、こういった日本の音楽教育の背景を知りません。そのため、私は「日本はこんなにすごいんだよ!」と見せたくなって(ときどき変に国粋主義者?)、3年前には大熊崇子さんのもう一つの曲を紹介しました。
それは混声4部で、しかもアカペラの合唱曲「この世の中にある」です。石垣りんの詩による曲で、3年前、当時のLe Groupe Vocalのメンバーがとても上手に歌いました。
で、時がたって今回。女性作曲家というテーマを前に私が思ったことは、「日本には女性作曲家がたくさんいるぞ!」だったんです。
オペラjrのメンバーにとって、「日本人作曲家というと大熊崇子」みたいにイメージが固まりつつあったので、日本の音楽界の背景、音楽教育の背景を見せるにも、「ここは他の作曲家を紹介しないと!」と思って、以前友人が送ってくれた日本の合唱曲の楽譜をパラパラとみてみました。
そこで見つけたのが木下牧子さんの「そのひとがうたうとき」です。谷川俊太郎のひらがなだけでかかれた詩につけられた音楽で、同じ詩に音楽をつけた人が他にもいます。木下さんの曲は、今やみんなが好きな合唱曲のトップテンにいつも入ってるようですが、大熊さん同様、私の時代にはまだ知られていませんでした。まあ、なんせお二人ともまだ若いですからね。
このところ疲れて元気がなかった私ですが、楽譜をパラパラとめくっていてこの曲を見つけたときは、すぐに「この曲だ!」と思いました。メロディーもハーモニーもしっくりきたのです。
で、翌日さっそくヴァレリーに話してみました。
「ねえねえ、ちょっと見せたい楽譜があるんだけど。」
ピアノでちょっと弾いて聞かせるとヴァレリーも即答。
「すごく気に入った。これしよう!」
彼女にとっても仕事でいろいろと重なりテンションもつっぱってて、しかも難解な曲にとりくむことも多かったなか、この曲のシンプルでかつ光がさすようなハーモニーがしっくりきたみたいです。
私もうれしくって「即売決定!」といいながら、「発音のこと、歌詞のフランス語訳はまかしといて」と言いました。
そう、楽譜にはひらがなで歌詞が書かれているわけですが、この日本語というものは、日本人にとっての英語やフランス語というものとは比べ物にならない未知のものなわけです。たとえば、日本人にとってのアラブ文字のようなもの。さらにはエジプトの古代文字のようなもの。フランス人にとったらなにやら書かれているけれどまったく見当もつかない「ふにゃふにゃとした線」以外の何ものでもないのです。
だから、アルファベット表記に書き直すのです。でもこのアルファベット表記がフランス人相手だと、ちょっぴりひと癖、二癖あるんです。
その辺のところはまた今度お伝えします。
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