Fête de la Musique とともにオペラjrの活動はひとたび落ち着き、次は7月のラジオフランスのフェスティバルに向けての準備まで、少し休養できる予定となっていました。そのため私には音楽学校が残るだけ。その音楽学校も残るレッスンは1回か2回だけ。バカンス前の最後のレッスンと思って、ゆっくりじっくりと取り組もうと思っていました。
同時に24日の水曜日にフランス全土で夏のバーゲンセールがスタート。フランスで「Solde ソルド」と言いますが、法律で時期が決められていて、あらゆる店舗が同時に行います。
私もこの6月は本当によく働いたし、6月末はソルドに出かけようと思っていたんです。
しかし、22日の月曜日に予定は急変。
私にとっては久しぶりの休日をのんびりと過ごしていて、午後はオペラ座の事務所に立ち寄り、のんきにおしゃべりをしていました。
すると事務所の電話がなり、7月頭に野外でオペレッタをするプロダクションの練習の真っ最中だけれど、彼らのピアニストがケガをしたために、急きょ代わりを探しているという内容でした。そこで電話を受けた人は「leonardo に頼みなよ!今ここにいるよ!」と言うのです。
状況もわからずに「え?」と止まっている私。でも、「さっきleonardo にも電話したって言ってるよ」と言われ、携帯電話を見てみたら、あらまあ、確かに留守録が入っていました。
で、話を聞いてみると、オッフェンバックの「La Grande-Duchesse de Gérolstein ジェロルスタイン大公夫人」というオペラ。モンペリエのオペラ座とは別の組織で、Folie d'Oという名で、年に一度、7月上旬に一種のフェスティバルのような形でモンペリエのChâteau d'Oの野外ステージで公演をしているのでした。6月ごろから道路わきにある巨大広告に、このオペラの公演の宣伝があちらこちらで大々的にはられていたので、私も今年の演目がこのオペラだということは知っていました。
彼らにとっても本当に急な問題で、大至急、今すぐにピアニストが必要だとのこと。本番は2週間後に控え、今は演出の練習の真っ最中。毎日、日曜日をのぞいて11時から13時と14時から19時まで取り組んでいるといいます。私はこのオペラを全く知らなくて、お恥ずかしながらタイトルすら今年の公演の広告を見るまで聞いたこともなかったんです。でも彼らも大ピンチの状態。私の都合がつき次第、すぐにでも初見でやってほしいというのです。チャレンジしてみたい気持ちと、そんな大きなプロジェクトに突然、初見で参加して役目が務まるのかという疑問と、音楽学校は今、今年最後だからはずせない、、ということで迷いましたが、彼らの困った状態もよくわかったので、「全部の日にちはできないけれど、、、」ということでOKしました。とくにこの月曜日が私には休日でなにも予定がなかったものですから、「今から顔を出しに行くことはできるけど。。。?」と提案してみると、むこうは大喜びで「じゃあ、待ってます!」との反応。
さて、こんなわけで私の予定はスピーディーに急展開。
すぐさま家に帰って車にのり、彼らの練習場所に向かいました。
モンペリエの郊外にある、見本市などに使われるエクスポジション施設。その中の一角で、彼らは舞台セットなどとともに練習していました。指揮者、演出家、ソリストたち、ダンサーたち、そして合唱としてモンペリエのオペラ座の合唱団がいました。
私がよく知っている人は舞台マネージャーをつとめるMだけ。
本来なら私も緊張していてもよいような状況だけど、あまりに急な話だったから緊張もなにもする時間もなくて、かけつけたわけです。電話で話をしてから1時間以内に現れた私に、指揮者をはじめ、彼らは皆、感謝感激という感じで暖かく迎えてくれました。
で、彼らのスケジュールと私の空いてる時間を見比べて、私ができない日は他のピアニストにも頼むということで話はまとまりました。
「じゃあ、楽譜を渡すから明日の朝から、、、」と言われたので、「あれ、今日は必要ないんですか?」と聞く私。「あ、今から残ってくれるの?」と大喜びされて、すぐさまピアノに向かいました。
正真正銘の初見のスタートです。
歌手たちはみな音楽の練習はもう終えていて、今、演技に取り組んでいる段階で、中にはこれまでに何度もこのオペラを歌ったことがある人もいます。指揮者もオペレッタを得意とする人。みんなはもう知りつくしているところへ、私一人まるで何も知らないで参加。
でもどうやらこの初見参加はうまくいったようで、みんな大喜びしてくれて、この日の19時までの練習が終わった後、たくさんの人に 「Merci !!」と言ってもらい、私も「役に立てたかな。」と満足して家に帰りました。
でもよかったのはこの日だけ。。。?
結局、このあと私が参加したのは、火曜日の朝、木曜日の朝、そして金曜日一日中。彼らは毎日練習をするわけで、火曜日の午後は私もよく知っているコレペティ大ベテランで70歳をもう超えているG、水曜日の一日中と木曜日の午後は、これまた私も知っている、オペラ座の合唱団のピアニストのVが役目を務めました。
で、問題は、私はこのオペラを全く知らなくて、月曜日の午後に楽譜を初めて見たわ、オペラ全幕の楽譜というのは400ページ以上あるわで、初見が効くとはいっても、ハイテンポでノリのいいオペラの全体像が把握できません。私の空いてる時間をすべてOKしたので、残りの時間は音楽学校で仕事をし、家でこのオペラの準備をする時間がありませんでした。
かたや、大ベテランのGはあらゆるオペラのレパートリーを知り尽くしている人。合唱団とともに準備をしたVは、このオペラの大部分を知っています。
さらに、指揮者であるJは、この組織のディレクターでもあるので、あらゆる雑事にも追われ、ほとんど指揮台に落ち着いてくれません。今やっている練習というのは演出の練習ということもあって、本来なら、指揮者がいなくてもコレペティがすべてを把握して、なんとか場をしなげるべきものです。
でも私は曲は知らないわテンポも知らないわで、すべきことができないから困ってしまいました。
みんな私は初見をしているというのはわかっているはずだけど、本番も間近な練習の終盤ということで、私のせいでリズムが崩れてしまってはだめです。
他の二人のピアニストたちの仕事ぶりなんて見なくても、私との差が大きいな~というのを感じ、木曜日と金曜日はなんだか居心地が悪くなってしまいました。
でも家で練習する時間もないし、せめてもと思って、指揮者がパソコンにオペラ全幕の音と映像をもっていたのでコピーをしてもらいました。まあ、こんなこと頼むコレペティもいないでしょうね。。。情けないけど、でも時間がないから仕方がない。
オーケストラが来るまで、あと2日の練習があります。
う~ん。。。正直、楽しめていませんね、この仕事。
彼らが困っていたから、お役に立てるならと思って、できる時間だけならと思ってOKしたけど、家で準備する時間のこともちゃんと考えて返事した方がよかったかなあと今頃思う。
でも、いずれにしても彼らにとっては一分一秒を争う問題だったから、こっちもすぐに返事しないとだめだったからね。
さて、今回のことが今後の私の活動にプラスとでるのか、マイナスと出るのか?
何気ないことでも、人生というのはとっさの判断によって方向が変わるなあ~とつくづく思う私です。
6月のコンサートピークから引き続きこの状況。
めちゃくちゃ疲れています。。。。。
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