La Petite Chorale は数年前から存在し、活動していましたが、こうして本当の舞台にたつプロジェクトを得たのは今年度が初めてのこと。ヴァレリーの指揮・指導、そして演出にカトリンヌを迎え、イザベル・アブルケール Isabelle ABOULKER の「5 contes musicaux pour les petits」(ちびっこのための五つの音楽物語)を発表しました。

La Petite Chorale のメンバーが公けに舞台に出るということで、名づけられたのがLes Choristes en Herbe という別名。「芝生の上の合唱団員たち」といった感じ。
イザベル・アブルケールという人は子供のために合唱曲やオペラをたくさん書いている人で、モンペリエの私たちがこの作品で舞台を行うということをとても喜んで興味をもってくれていました。「見に来たい」とご本人も言っていたけれど、残念ながら来られなくなったということで、素敵な出来栄えを披露できなかったのが残念。
この五つの音楽物語から、以下のお話を選んで歌いました。
-Le petit train amoureux de la mer (海に恋する小さな汽車)
-L'histoire d'Antoinette (アントワネットのお話)
-La poule savante (賢いめんどり)
-Simon, le garçon qui aimait les mots (シモン、言葉が好きな男の子)
さらにはこの4曲の音楽物語を単に歌うだけではなく、カトリンヌのオリジナルの演出によって、夜ベットから抜け出した子供たちが屋根裏部屋で、たくさんの帽子が入った衣装箱をみつけ、さらには古いオルゴールをみつける.... という状況設定がされ、スペクタクルは照明が落とされ、真っ暗になった舞台にパジャマ姿の子供たちが懐中電灯を片手に現れるというシーンから始まりました。
コンサートを行ったのはいつものようにオペラ座内の小ホール Salle Molière サル・モリエールですが、そこにある大きな鏡とかも上手に舞台設定に使い、「真っ暗でよく見えないよ!誰か電気をつけに行ってみて!」というところから、舞台に照明があてられて、観客は初めてパジャマ姿のかわいいちびっこたちを見るのです。電気がついて「あ~。」という子供たちの自然な声がかわいくてかわいくて。
そして箱から衣裳をだしてそれぞれが身につけると同時に、「これなんだ?」といって子供たちが見つけるのが、レースがかかったグランドピアノ。そこで子供たちがレースを取り除くと現れるのが古いオルゴール人形。子供たちが彼女の手を鍵盤の上にのせると、ポロンポロンとピアノを奏でます。
で、実はこの古いオルゴール人形というのが実はこの私。観客の入場前からレースの下で待機していた私が現れるわけです。そしてそこからイザベル・アブルケールが書いたテクストとともに音楽劇が始まります。
舞台という観点で語る時、この音楽劇をするのにグランドピアノというのは視覚的に邪魔な存在で、最初からカトリンヌを悩ませました。ピアノを舞台下に置くという案もあったけれど、立派な舞台装置のないこのホールで、コンサートサイズのグランドピアノを上げたり下げたりするのは大問題。その費用もないわけだし、初めて歌うちびっこたちにとってピアノの音がよく聞こえることは不可欠。ピアノが舞台下にあっては、舞台上のちびっこたちにはよく聞こえません。そんなこんなで、カトリンヌが考え出したのが私にオルゴールの役をあたえ、私とピアノを舞台演出の中に入れ込むことでした。そのため私はコスチュームつき。18世紀の羊飼いの娘だかなんだかというイメージで、衣裳を担当したジスランがオペラ座の衣装ストックから見つけてきたのがこのドレス。
かわいらしいドレスで大好評でしたが、実は落とし穴が。。。このネタはまた次回お伝えしますね。
まあこうしてピアノを舞台奥に置くということに決めましたが、でも私からは指揮をするヴァレリーが見えない、彼女も私が見えないということで、結局私がすべての曲の始めを指揮なしで始め、ヴァレリーが私に合わせて子供たちを指揮するということにしました。
それにしても毎度のことながら、オペラや音楽劇の演出という仕事は、アイディア力、発想力、そして現実とのおりあいをつける解決力が不可欠なすごい仕事だと思わされます。
今回の舞台に関しても、予算が限られ、使える舞台装置も何もなく、特別な舞台照明もないなかで、カトリンヌは5つの衣装箱だけを使って、うまいこと場面転換を行いました。歌の方はみんなで歌ったり、ソロで歌ったり、3人とかの小グループで歌ったりして変化をつけ、作曲者によるセリフとカトリンヌによるセリフとを混ぜながら、素敵な音楽劇の舞台ができたのです。
楽譜はもちろん読めない、音楽の基礎知識も何もなく、初めて歌うことを習ったメンバーがすべての曲を暗譜で歌ったのはもちろんのこと、一人で歌うことだって見事にやってのけるちびっこには感心したし、中にはびっくりさせられるくらいに劇的表現たっぷりにセリフを言ってのける子たちもいます。とてもシンプルな歌、シンプルなセリフですが、子供たちが等身大のままでいつつも、舞台の上に立つということで私たちが期待していた以上の可能性を見せてくれて、本当にいいスペクタクルとなりました。
最後の曲が終わったところで、舞台裏から「電気をつけっぱなしにしたのは誰なの!?」と叫ぶ声が入り、子供たちの真夜中のやんちゃ騒ぎが見つかっちゃった!というカトリンヌによる設定で照明が消え、舞台終了です。
お客さんは大喜び。もちろんお客さんの大部分はメンバーの家族だったり友達だったりしますが、音楽関係者、児童教育関係者とかもいるわけで、とにかくみんなの期待を大きく上回るもので、大成功でした。
日本では幼児の英才教育とかが盛んですが、そういうことがないフランスでは、6歳から9歳というと、まだまだおちびの年頃で、学校でお遊戯会みたいな発表会を年度末にする程度で、セリフを言えればいい、歌はとりあえず歌ってればいい、というレベルが実態ではあります。そこへオペラjrは、英才教育なんて特別なものではなく、ごくごく普通の子供たちを相手に舞台の上にたたせるというスローガンを抱えた団体。たとえちびっこでも3回練習に欠席したら理由はどうであれ脱会という厳しいルールとスケージュールのもと、要求度の高いヴァレリーとカトリンヌが真剣に取り組んだ結果、「単なるおこちゃまの発表会」とは全く違うレベルの舞台が発表できるということを見せることができたので、私たちもみんな満足。満足というよりも、期待以上のものだったので、心地よい驚きといった方がいいかもしれません。
ああ、みんなにこの舞台を見せたかった!
パジャマ姿にいろんな帽子やガウンなんかを羽織ったちびっこたちはほんとにかわいくて、写真にとりたかったのだけど、私は舞台の奥中央で弾くので、子供たちは私よりも前にいて、写真どころか彼らのやってることを正面から見ることが一度もできませんでした。残念。
子どもたちをそのままに、シンプルでありながらファンタジーに富んだカトリンヌの演出、真剣に取り組んだちびっこたちにブラボー!です。
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