2009年7月12日日曜日

とっさのイタリア語会話

予定外の緊急仕事だった「ジェロルスタイン大公夫人」の練習で私にとっての最後の日、任務を果してふわ~っと気を抜いて「さあ、ちょっとのんびりしよう。」と思ったところへ、またも緊急の仕事が入りました。

留守録に「また頼みたい仕事があるんだけど。。。」とオペラ座のTさん。
話を聞いてみると、ラジオフランスのフェスティバルの今年の目玉作品「C'était Marie-Antoinette」(マリー・アントワネットを題材にしたスペクタクル)の練習で、何日間かもう一人コレペティが必要だということ。

このブログでも何度も名前が出ているジャン=ポール・スカルピタ氏Jean=Paul SCARPITTA の独自のアイディアによる構成で、マリー・アントワネット役の俳優と数人の歌手とコーラスによって、マリー・アントワネットの時代の音楽を混ぜてオペラチックにまとめられるスペクタクル。マリ・アントワネットのセリフと、彼女の心情を表わす音楽、あるいは当時の状況を表す音楽が4人のオペラ歌手によって歌われます。
全くのオリジナルですからどんな感じになるんだろうと 興味があった作品だったから、いつものように自分で務まるかという不安はありながら、この製作の準備に参加できるのならうれしい話なのでさせてもらうことにしました。幸い、彼らが私を必要とする日程が私の予定にぴったりはまりOK。

このスペクタクルはフェスティバルの最後、29日と30日にオペラ座コメディで公演が予定されています。
音楽の選曲もスカルピタ氏によるもので、彼にアドバイスを与えたイタリアバロック音楽の有名指揮者ファビオ・ビオンディ氏Fabio BIONDI率いるバロック・オーケストラ「ユーロパ・ギャラント Europa Galante」 が演奏。

練習は7月7日に始まり、私の役目は7月9日から7月29日の本番までの間に4日間。私にとっての開始日である7月9日にマエストロ・ビオンディ氏がやってきます。そのため、それまでの3日間はビオンディ氏が信頼しているコレペティのシモーネ・ジョルダーノ氏が伴奏を務め、歌手たちの指導も行っていました。
このスペクタクルで使われるのは20数曲。うち、私が聞いたことがある音楽はたったの2曲。。。私は9日にダンサーや俳優さんの舞台稽古での伴奏を務めないといけないので、それまでに曲のテンポ、曲のつなぎ方なんかを把握しておかないといけません。
知っている曲が2曲という情けない現実の中、私にできることは譜を読んでおくことと、できる限りジョルダーノ氏が弾くのを聞いて、テンポなんかを頭に入れておくことだけでした。

そのため、私は7月7日の練習初日から参加。そしてジョルダーノ氏の周りをうろちょろして、とあるごとに質問とかをしたのでした。

そして問題となったのが、このジョルダーノ氏はフランス語を話さないイタリア人だということ。
簡単な英語ならしゃべれると言ってきたので、私と彼は簡単な英会話でコミュニケーションをとりました。が、スカルピタ氏や歌手たち、そしてオペラ座のスタッフたちはみんなイタリア語が使えるんです。はっきりいって私だけ疎外感。しかも私にとっては個人的にショックが大きい。だって学生時代に私が一番好きで、一番勉強していた外国語はなにをかくそうイタリア語だったのだから!!

みんなのようにイタリア語でジョルダーノ氏と会話できない自分にショック。

イタリア語というのは日本人にとったら一番身近な発音形態をもつ言語で、聞こえてくる音が全部簡単にひらがなで書き表せると言っていいほど、私たちには自然に発音できる言語。しかもそれなりに勉強したから聞き覚えのある単語もあるし、今やフランス語とはラテン系ということで似たような言葉もたくさんあって何を意味するか想像ができる単語が一杯。
だからイタリア語の会話を聞いていると、何をいってるのかほとんど推測がつく。だから相づちは打てる。日本語でだったりフランス語でだったり英語もまぜて。なのに言いたいことは何も言えない歯がゆさと悲しさ。

このとっさのイタリア語会話で私が言えたことは、、、

「こんにちは!」 ボンジョルノ
「やあ!」 チャオ
「ありがとう!」 グラッチェ
「どうぞ」 プレーゴ
「私の名前は○○です。」 ミキアーモ・・

そしてなんとか記憶を振り絞って出てきたのが

「わかりました!」 カピートです。

ああ、イタリア語をすっかり忘れてしまった自分が悲しい。
今回のことで、やっぱり私が好きな外国語はイタリア語だと再確認。

どちらにしろオペラの世界で仕事をしたければ、イタリア語を操れるかどうかは必要不可欠ということはわかっていました。そのこともあって、つい最近、日本に残してきたイタリア語教材を親に送ってくれと頼んだところ。

ジョルダーノさんとの出会いで一気にモチベーションがあがりました。
勉強するぞ、イタリア語!

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