2009年12月6日日曜日

友の晴れ舞台

11月1日に私が強行でリヨンに行ったのは、私のフランスでの大事な友達レイラの晴れ舞台を見に行くため。


レイラというのは、2002年10月、フランスに来て数日後の私が大学で出会った女の子。私より2歳年下で、当時まだ声楽の勉強を真剣に初めて間もなかった彼女だけど、すごく深くて丸みのあるとてもいい声を持っていました。誰が聞いてもインパクトの強い印象を受け、「何かを持ってる」と感じさせる歌手でした。大学のオプション授業「室内楽」で私と彼女はドゥオを組み、この授業の担当教師でモンペリエオーケストラのフルート奏者でもあるレニエ氏の全面応援&サポートを受けた私たちは、一年間の間、大学内のことある機会で演奏させてもらい、名誉博士号授与式のセレモニーでも演奏させてもらいました。
当時、まだフランス語も片言で下手っぴだったであろう私ですが、彼女とは気が合って、息が合って、プライベートの時間も一緒に過ごし、花の貧乏学生同士らしくささやかながらいろんなことをしました。涙が出るほどお腹をかかえて笑いあったりできるいい友達でした。


その後、2003年には修士論文執筆とともに、私は仕事をし始めてハードな生活に入り、彼女は彼女で本格的に声楽の勉強に没頭し、セートの小さなコンセルバトワールからリヨンの国立高等コンセルバトワールに直接入学するという快挙をなし、リヨン生活を始めました。

4年間の学業を終え、去年の6月に優秀な成績で卒業。
これからどんな活躍をするのかと私も楽しみにしていたところ、さっそくとある演劇のオーディションで抜擢され、パリの劇場で数カ月にわたる公演に参加したのです。

その劇作品と言うのが、大オペラ歌手マリア・カラスが最後におこなったジュリアード音楽院でのマスタークラスを舞台にしたその名も「マスタークラス」。これまでにいろいろな賞を得てきた有名な作品です。主演女優もこれまでにいろんな人が演じてきました。
今回、レイラが参加する舞台でマリア・カラス役を務めるのは、女優であり歌手であり、フランス人なら誰もが知っているマリー・ラフォレ。日本人なら知ってる人は知ってるだろうけど、アラン・ドロンで有名な「太陽がいっぱい」の相手役をした人であります。大きな目が印象的な人。

この「マスタークラス」では、マリア・カラスの回想シーンが多いのですが、マスタークラスなだけに、受講生が登場します。声楽の道を志す若者たちなわけですが、その中の一人の役として、レイラは歌も歌い役も演じるのです。


彼らのパリ公演は大成功をし、主演のマリー・ラフォレは毎年フランス演劇界が選ぶ最優秀主演賞に選ばれました。
そして数ヶ月間のパリ公演を終えてから、フランスの地方公演が始まったのです。

私はもちろんパリ公演に駆けつけたかったのですが、スケジュール上無理だったので断念しましたが、何が何でもどこかの公演を見なくては私の気持ちもおさまりません。レイラから情報をもらったり、インターネットで検索して、だいたいの場所と日程を調べました。でも結局南フランスのほうにはあまりこないよう。ボルドーとかストラスブールとかリール公演では遠くていけません。
そこで見つけたのがリヨン公演。しかもトゥッサンのバカンス中。幸い私も仕事がちょっと軽くなる時だったこともあり、11月1日のリヨン最終公演の日に行くことを決めたのでした。


お昼前にモンペリエを出てTGVでリヨンへ。その日の午後、レイラと久しぶりの再会をしたのは先日のリヨンの記事で書いたとおりです。その日はレイラのお姉さんファチアも彼女に会うためにモンペリエからリヨンまで来ていて、3人でレイラが出演のために劇場に向かうまでの間、レイラが滞在していたアパートでおしゃべりに花をさかせたのでした。
レイラの家庭はアルジェリア出身の両親のもと、4人のお姉さんとお兄さんが一人いる大家族なんですが、2002年当時、レイラと仲良くなった私は彼女の兄弟全員にも紹介してもらってよくしてもらってました。とくにこのファチアは上から二番目のお姉さんなんですが、当時彼女が文学で博士論文執筆中の学生をしていて、私がフランス語で修士論文を書いたときに添削や訂正をしてくれたのは彼女なのです。
レイラともファチアともゆっくりとしゃべったのは2年ぶりなのに、まったく違和感なく、昨日までも普通におしゃべりしていたかのように、しっくりきました。
でも2006年ごろまでは連絡とったり会ったりできていたのに、そのあと連絡無精になってしまってここ2、3年は私はすっかり仕事に没頭してしまっていたのだなあと気づき反省。


まあ、ともあれ、レイラの舞台を見に来たわけではなかったファチアも、特別に妹が手配した招待券で私と一緒に見に行くことになりました。


向かったのはリヨンの中心地にある歴史ある劇場Téâtre de Tête d'Or。
20時45分開演にむけて、たくさんの人がもう集まっていました。







マスタ―クラスのポスターがこちら。








出演はマリア・カラスと受講者3人、そして伴奏ピアニストとスタジオの用務員の5人だけ。
実はこの伴奏ピアニスト役のフレッド氏というのが、Helilladeのエレーヌと普段から一緒によく仕事をしているピアニストで、あの「ビスタンクラック」で私が代理を務めたのは彼だったんです。
お互い名前は前から聞いていたけど、今回、こうして初顔合わせ。


舞台は休憩はさんで3時間の作品。
ほとんどの部分がカラスの回想シーンです。

レイラは田舎からきたうぶな若い女の子役。ベッリーニのアリアで受講しにきたけれど、最初の一言で「それじゃダメよ。」とすぐ止められてなかなか歌わせてもらえない役。
それでも最後には一曲通して歌わせてもらえるのですが、歌い終わってレイラはお客さんから拍手喝さいを浴びていました。私も彼女の声をソロで聞くのは実に5年ぶりなんです。でも彼女の声の特質を保ったまま、しっかりトレーニングされた声へと成長していました。「がんばったんだなー。」と思って私も感無量。拍手を浴びる友達の姿がうれしかったり誇りに思えたり。

主演のマリー・ラフォレも圧巻。
実は今年70歳を迎えた大ベテランの彼女。
存在感がすごいし、そして迫力ある声がすごい。
70歳であんなことができるというのは、やっぱり一般人とはまるで違いますね。
エネルギーを費やすということを知っている人だけが出せるエネルギーというのでしょうか。
舞台終了後、彼女は客の熱心なスタンディングオベーションを受けていました。



さて、出演者の友人ということで舞台終了後の舞台裏に通してもらった私。
レイラの控室で彼女が有名なマンガ「アステリックスとオベリックス」を持ってきていたことに気がつき、私は大笑い。だって、華やかな舞台にでる女優兼歌手なのに、こんな子供向けマンガを控室まで持ってきて読んでるだなんて。。。
そういえば、彼女、昔からどっかおかしなところがあった子でした。お年頃かと思えば変な上下つなぎのパジャマを着てたり。っとプライベートネタをあかすと怒られますが。
とまあ、レイラらしいから記念に写真を撮らせてもらいました。もう貧乏学生のころとは違います。彼女も華やかさに磨きがかかってきました。






この後、マリー・ラフォレに紹介された私。「ブラボー!」といいながらほっぺにキスのビズをしました私。フランスに来てからやたらと有名人と接する機会を得ている私ですが、今回はビズです。あはは。

出演者たちと一緒に控室から出た私ですが、劇場のロビーでは観客たちがサインや写真を求めるために待っていました。3時間の大舞台のあとで疲れているだろうに、気さくにサインに応じていましたよマリーさん。こういうところもすごいなあと思います。






この後、0時はもう回っていたわけだけど、またレイラのアパートに戻ってお茶をしておしゃべり。私は翌日朝10時からの仕事のために朝一のTGVでモンペリエに帰るし、レイラも午前中にパリに戻る。だからハードスケジュールになるのはわかってるけど、やっぱり久しぶりの再会だからなごり惜しいものです。

しまいには雨が激しく降ってきて、真夜中の2時過ぎにホテルに戻る私を途中まで見送ってきたレイラとローヌ川にかかる橋の上でさよなら。

レイラはこの舞台の地方公演の終了後は、これまた超大物演出家との仕事が決まっているのです。本当にこれからが楽しみです。


お互い「身体に気をつけてがんばるんだよ~!」と言って別れました。

友の晴れ舞台を見れて大満足。
ハードスケジュールだけど、来ることに決めて本当に正解。よかった。

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