2010年7月18日日曜日

Andromaque

今年のラジオフランスのフェスティバルは、バロックオペラ「アンドロマク」(Andromque : 日本ではアンドロマケーと呼んでいるようです。)で幕開けました。




これはベルギー出身のグレトリ(André-Ernest-Modeste Grétry 1741-1813)が1780年に作曲した作品です。

グレトリはベルギーのリエージュに生まれましたが、イタリアオペラの勉強をしようと決意してローマに渡り、その後はフランスで活躍した音楽家です。パリではヴェルサイユ宮殿で王妃の楽団の団長を務めたり、オペラ、オペラ・バレ、コミック・オペラなどを多数作曲して、その時代を代表する音楽家でした。彼の時代、彼が活躍した場所というのも、マリー・アントワネットがいたヴェルサイユ宮殿ですからイメージが浮かぶのではないでしょうか?音楽史を知っている人なら、有名なブフォン論争のちょっとあと頃ですね。宮殿では王や王妃の支持を得ていた彼ですが、フランス革命勃発後も、今度はナポレオンの絶大な支援を受けて生涯を終えました。

ストーリはというと、ジャン・ラシーヌがギリシャ神話の悲劇をもとに書いた「アンドロマク」が題材です。アンドロマク(あるいはアンドロマケー)はギリシャ神話に出てくる女性のことです。


コミック・オペラをたくさん作曲したグレトリにとって、生涯で唯一の悲劇オペラ。当時、いろいろな反響を呼び起こした話題作だったようですが、作品が発表された翌年の1781年に劇場で火事が起きたのをきっかけに紛失、忘れさられてしまったのでした。

それを数世紀ぶりによみがえらせたのが、このブログでも何度か話題に出ているエルヴェ・ニケ氏(Hervé Niquet) と彼のバロック・オーケストラ Le Concert Sprituel(ル・コンセール・スピリチェル)なのでした。彼らはヴェルサイユのバロック音楽研究センターと協力しあって研究と探索を続け、見事この作品をよみがえらせたのでした。

2009年に、その発表演奏会やCD録音などがされ、今年2010年は演出付きのオペラとして一般にお披露目されたのです。ジョルジュ・ラヴォダン氏(Georges Lavaudant)の演出した舞台で、ドイツで初演を行い、今回、こうしてモンペリエのやってきたのです。

フェスティバルの初日、私は事務所で招待券をおねだりした結果、友達の分と2席頂けたので、聞きにいってきました。

4人の歌手、合唱、そしてオーケストラともにそろって質のよい演奏。悲劇なのだけど、ひっきりなしにテンポよく音楽が続き、えらいエネルギッシュなオペラだなあと思いました。そこら辺はニケさんの解釈なのかな?

悲劇なだけに、きれいだけど暗い舞台セット。ただ全幕通して舞台セットがまったく変わらなかったのは残念だった。あともうひと押しアクセントがあったらよかったのに。。。と思った私。

そんなこんなで、この作品の、この舞台の大ファンにはならなかった私ですが、それでもマリー・アントワネットの時代から今年2010年までの間、人々から忘れられていた作品がこうしてよみがえるというのは、なんかすごいものを感じますね。歴史のロマンとでもいいますか。

ニケ氏は「演奏する研究家」、あるいは「研究する演奏家」なわけで、彼の情熱を感じた舞台でした。

その彼が2009年の演奏会にさきがけてのインタビューを見つけたので、興味のある方はどうぞ。フランス語ですがあしからず。

http://www.youtube.com/watch?v=rlcuveWi5ok

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