さて、今週、モンペリエのオペラ座では、「Le château de Barbe-Bleue」(青髭公の城)の公演が行われています。これはハンガリーの民謡などからの素材をとりいれて、独特なスタイルの音楽を残したバルトーク(Bela Bartok)が1911年に作曲した彼唯一のオペラです。
実はこの作品、2009年にこのブログ上でも話題にした作品で、今回は二人のソリストと指揮者だけを変えた再演なのです。(当時の記事はこちら:2009年4月20日の記事/2009年5月8日の記事)
演出はジャン=ポール・スカルピタ氏。このブログでも何度か話題に出しましたし、私も一緒に仕事をさせてもらったこともある人ですが、2011年からモンペリエオペラ座とオーケストラのディレクターに就任していましたが、職員からマスコミも政治かも巻き込んだ大問題が発生して、2013年の12月を持ってポストから去るという結末に至りました。
2014年の一月からは新たな女性ディレクターがいるわけですが、それでも2014年-2015年のシーズンはスカルピタ氏が組んだものなので、今年度のプログラムには彼による演出作品や彼と縁のある人たちが多数組まれていました。その都度、オペラ座、オーケストラのスタッフとは微妙な空気、関係があったわけですが、今回の「青髭公の城」の再演をもって、事実上、スカルピタ氏がモンペリエから姿を消すということになります。
実はこの作品、2009年にこのブログ上でも話題にした作品で、今回は二人のソリストと指揮者だけを変えた再演なのです。(当時の記事はこちら:2009年4月20日の記事/2009年5月8日の記事)
演出はジャン=ポール・スカルピタ氏。このブログでも何度か話題に出しましたし、私も一緒に仕事をさせてもらったこともある人ですが、2011年からモンペリエオペラ座とオーケストラのディレクターに就任していましたが、職員からマスコミも政治かも巻き込んだ大問題が発生して、2013年の12月を持ってポストから去るという結末に至りました。
2014年の一月からは新たな女性ディレクターがいるわけですが、それでも2014年-2015年のシーズンはスカルピタ氏が組んだものなので、今年度のプログラムには彼による演出作品や彼と縁のある人たちが多数組まれていました。その都度、オペラ座、オーケストラのスタッフとは微妙な空気、関係があったわけですが、今回の「青髭公の城」の再演をもって、事実上、スカルピタ氏がモンペリエから姿を消すということになります。
彼とはいろいろと問題があったわけで、今でもそのうちのほとんどは尾を引きずっている状態なので、今日はそういった裏話に入るのは避けさせてもらいます。でもそういった問題も踏まえたうえでも、この「青髭公の城」は、彼の演出による作品の中でも「あれは素晴らしかった。」と私が今もこれからも言うであろう作品です。
もともと登場する歌手が二人だけで、無駄が省かれた作品ではありますが、CORUMの大きな舞台を光だけによる舞台美術で、すっきりと、且つ、すごく効果的に仕上げられた作品は、「美しい。」の一言に尽きました。
光を効果的に使っただけあって、この演出でかかせないのが、スカルピタ氏のコラボレーターである照明デザイナーのウルス・シェーンバウム氏(Urs Schönebaum)氏です。
以前から何度も共演してきた二人ですし、今では彼自身オペラの演出を手がけることもあるようになってきていますが、この青髭公の舞台は、彼の才能をベースとした、彼の才能による演出といっても過言ではない舞台に仕上がりました。
私は今回の公演は観に行っていませんが、演出も舞台装置もすべて2009年と同じものです。今回の公演のティーザーがあるのでご覧下さい。
モンペリエ国立オペラ座公演・バルトーク作曲「青髭公の城」
いかがですか?
見てみたいなと思われた方が多いのではないでしょうか?
何度も言ってきたように、私はオペラの世界で働いているくせに、実はあまりオペラファンではないというか、オペラはあまり好きではないのですが、この「青髭公の城」は好きですし、日本でも公演の機会があるといいなと思っています。もともとオペラファンの多くは、モーツァルトやロッシーニなどのスタンダードなオペラを愛好してると思うのですが、こうした近現代のオペラの中も好きになる人が増えるといいなと思っています。近現代のオペラはざっくばらんに言って見れば、オペラっぽくなくなっているわけで、バルトークによるオーケストレーションを聞くだけでも、近現代音楽ファンにはたまらないと思います。
この音楽に、舞台上のシンプル且つ巨大なネオンが、白と赤と緑の三色だけでも見事にマッチして、とてもセンスのいい演出に仕上がっています。
さて、こんなところで少しだけ作品の補足説明をさせてもらいますね。
このオペラの台本はバルトークとコダーイの共通の友人で、民謡採集のための旅行にも同行したバラージュが1910年に発表したものですが、オリジナルの物語はシャルル・ペロー (Charles Perrault 1628-1703) の「青髭」です。
日本人にとったらシャルル・ペローという名前はなじみがないかもしれませんが、「シンデレラ」、「眠れる森の美女」や「長靴をはいた猫」の作者なんです。これらの物語はペローによるオリジナルの物語ではなく、民間に言い伝えられる物語をペローが採取し、彼の時代の文化・風習を取り入れて、子供にも親しめるような文体でまとめたものです。
日本人も名前をよく知っているドイツのグリム兄弟やイギリスのマザー・グースよりも、ペローの方が先の時代なので、童話という児童文学のジャンルの先駆者と言える人です。ちなみに「グリム童話集」と「ペロー童話集」には双方で取り入れられている物語がいくつかりあります。
「青髭」もグリム童話の第1巻では収録されていたものの、第2巻では削除されています。
さて、ペローによる青髭の物語はこんな感じ。
---皆から恐れられている金持ちの青髭。彼は新しく迎えた花嫁に「どこでも開けていいが、地下の奥の部屋だけは絶対に入ってはいけない。」と言いながら鍵束を与えて外出にでかけた。誘惑に負けた新妻は金の鍵の扉の部屋を開け、その中で殺害された青髭の先妻たちの死体を見つけてしまう。戻った青髭に殺されそうになる新妻だったが、かけつけた二人の兄によって青髭は殺され、新妻は青髭の財産をすべて手に入れて金持ちになった。---
この物語をもとにして、「青い鳥」や「ペレアスとメリザンド」で有名なメーテルランク (Maurice MAETERLINCK 1862-1949)は「アリアーヌと青髭」という戯曲を発表しました。この戯曲をもとにして、「魔法使いの弟子」で有名なデュカス(Paul DUKAS 1865-1935)が1907年に全3幕からなるオペラを作曲しています。
メーテルランクのバージョンでは、まず青髭の新妻にアリアーヌという名前がつけられているという違いがあること。そして青髭の5人の先妻たちは殺されてはいなくて、城に幽閉されいたという違いがあります。事実をしったアリアーヌが城をさり、青髭と先妻達は城にのこるという結末です。
さて、バルトークのオペラ「青髭の公の城」の台本を書いたパラージュは、メーテルランクのバージョンをもとに、さらにいくつかの変更を加えました。まず新妻はユディットという名前。そして青髭公は外出で不在になるのではなくて、次々と扉を開けていくユディットに付き添っているのです。
それぞれの扉の先は次のような部屋です。
第一の扉 : 拷問部屋
第二の扉 : 武器庫
第三の扉 : 宝物庫
第四の扉 : 秘密の庭
第五の扉 : 青髭の広大な領土が見える
第六の扉 : 白い湖が見える
第七の扉 : 3人の先妻達
薄気味悪い青髭公の秘密と、ただ一組の男と女の関係がうまいことつなぎ合わされていて、バルトークのオペラでは、もともとの「怖い話」ではなくてこの一組の男女の姿がテーマとなっているといえるでしょう。
オペラファンでもない私がこうしてこの作品に触れる機会を得たこと、そしてこの見事な演出のバージョンを観ることができたこと(しかも歌手も世界一級でした)は、本当にラッキーなことだったと思っています。
バルトークの作品は、音楽と言葉が密接につながっていて他の言語でのバージョンを作りかねる点と、そもそもハンガリー語で見事に歌いきれる歌手もそうはいませんし、ストーリーがモノトーンで、舞台設定も一組の男女と7つの扉だけですから、世界中のオペラハウスでも上演される機会が少ない作品の一つだと思うのです。
世界のどこかで他の演出でこの作品を観たことがある方は、ぜひ感想などお聞かせください。

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