2017年12月30日土曜日

時は過ぎる

2017年ももう年の暮れ。

気がつけば、一年半以上もこのブログから離れてしまっていました。ご無沙汰しています。

前回のアップが2016年の7月ですから、「ああ、この時期から何があったのかな、何が変わったのかな」と思い起こせば、もちろんいろいろあります。人生のビッグイベントあり、大きな生活の変化もありました。けれど時期的にちょうど重なるのは、仕事での変化。

モンペリエで生活を始めてから、単発アルバイトも含めて、いろんな職業を経験させてもらい、音楽界隈では何でも屋状態の私ですが、履きこなすというよりは履きまわすわらじの数がさらに増え、2016年の7月から新しい職業、新しいミッションをこなすようになりました。

短い言葉で言えば、オペラ座での楽譜の世話係です。世界中どんなオーケストラにもライブラリアンと呼ばれる楽譜の世話係がいて、フランス語ではビブリオテケールというのですが、それぞれの楽器のパート譜の世話をしなければいけない彼らとは違って、私はオペラ座でのプロダクションの楽譜担当がメイン。ソリスト、合唱団を含めた歌手陣、または演出家を始めとする舞台照明デザイナーや舞台マネージャーといった製作チーム陣のための楽譜の手配や準備はもちろん、オペラであるだけに台本の世話も含まれてきます。プロダクション以外でも、合唱団のコンサートやソリストのコンサートもありますし、新しいシーズンのプログラムを練る組織上層部のためだったり、各種オーディションのためだったり、なんやかんやで年間を通して手配、準備すべき楽譜というのはあるものです。

そして1888年にこけら落としをした現在のモンペリエオペラ座なだけあって、歴史的に興味深いものやエピソードには事欠きません。私の新しい仕事場となった図書室というか楽譜庫にも、貴重なものがちらほらとあります。いつか少しご紹介したいなあと思っています。

私にこのミッションが与えられるまで、前任者はこの担当だけをフルタイムでしていたんですけど、財政難どころか存在危機を抱えるオペラ座の経費削減の一環として、私はこれまで担当していたミッションに、「さらにプラス」ということで、この楽譜担当になりました。必然的に仕事量に対して時間は足りず、複数のミッションをこなす私は常に走り回り、結果的にはなんだか日本の働きアリがのんきな街モンペリエに紛れ込んでしまった感があります。いろいろと改善されるべく労働環境にあるので、戦うべきところは戦おうと試みてはいますが、そう簡単にはいきません。
そんなこんなで納得のいかない悶々とした状態で、去年の夏からあっという間に時が過ぎてしまいました。そんな戦いの中で、文化の違いや仕事に関する考えなどいろいろと思うところも多いので、またの機会にとりあげたいと思っていますが、今日は過行く時間の中での「変化」の一つとして、私の通勤路を挙げたいと思います。

これまでにもオペラ座までの通勤路やCORUMまでの道のりや、モンペリエ郊外の音楽学校までの通勤路など、私には複数の道がありますが、2016年の夏から新たに加わったのはオペラ座内部での通り道。
例えばオペラ座のホールのステージは、スタッフの入り口から見て日本の二階にあたります。これまでの私には日常的にそれ以上に上がるということはありませんでした。でも楽譜庫はオペラ座の屋根の下最上階に近いところにあるのです。私にとっては毎日上まで上がる日々が始まりました。
その通勤路から眺める景色がこちら。




オペラ座のエントランスホールを上から見下ろし、コメディ広場を見下ろすギャラリーも見下ろし、窓の向こう側には広場を行きかう人たちやトラムが見えます。朝の光、午後の光、夕暮れ時の光、そして夜の

1888年10月にこけら落としが行われたこのオペラ座。7年前に舞台装置の近代化のための大工事が行われたとはいえ、建物自体は1888年から変わらずそのままのもの。マスネやサンサーンスといった名だたる作曲家たちも来たことのあるこの空間に、129年後、一人のアラフォー日本人が毎日とことこと通勤路として歩くことになるとは。
空間の不思議、時間の不思議、人生の不思議、そしてご縁の不思議をふと思うこ瞬間多々ありです。

正直、この先退職する年齢になるまでここに勤務し続けるとは全く思わない私です。いろいろと問題はあるとしても、今ここにいるというご縁は大事にしたいと思っています。

今現在日本では日付が2017年12月31日と変わっています。2018年ももうすぐ目の前ですね。私にとってはモンペリエに来て16回目の年の暮れとなりました。なんだかこのところ不穏一辺倒な世界ですが、少しでも多くの国、多くの地域、そして多くの人にとってよい方向に流れが向かいだす新年になりますように。

皆様どうぞよいお年をお迎えください。


2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

こんにちは、初めまして、ノリと申します。
偶然LEONARDOさんのブログを見つけて拝見させていただきました。私は今モンペリエでフランス語の勉強をしています。南フランスでフランス語が上達したらデッサンや音楽の勉強をしたいななどと夢描いていたのですが、フランス語の勉強が、楽しいですが、大変で毎日必死に授業を受けています。私が毎日散歩するときに見上げているオペラハウスで仕事をされているなんて、お仕事は大変なようですが、素晴らしい事だなと思い思わず書き込みをしています。
私は52歳で初めて留学を経験しているのですが、モンペリエで頑張っていらっしゃる日本人がおられるんだなーと思うと再びエネルギーが湧いてきました。ありがとうございます。
これからも応援しています。

leonardo さんのコメント...

ノリさん、応援メッセージをどうもありがとうございました。
4年近くもたってからコメントに気が付いて、今頃反応していて本当にすみません。
このメッセージを読まれることがあるかわかりませんが、ご声援をありがたくいただきました。
ノリさんも滞在中、フランス語に苦戦されたとは思いますが、モンペリエや南仏でたくさんの思い出を得られたことと思います。