引き続き、Tous à l'Opéra「みんなでオペラ座に行こう!」のお話です。
5月8日土曜日の午前中は、弦楽器製造についてのアトリエでした。前日に続いて参加する私は、いかにも張り切った熱心な市民代表のようです。
同じ部屋で行われているものの、前日の「いい仲間」の管楽器とは、ガラッとムードが変わって、部屋に入るなり、ちょっとクラシカルな雰囲気の中、アトリエは始まりました。
この日の講師は、二コラ・ジル(Nicolas Gilles)氏。参加者がみんな部屋に入って席に着くのを、静かにじっと待ってくれている姿は、何やら威厳ある玄人の様相です。
この二コラさんは、今40代。2001年に自分の工房をモンペリエに開いて、楽器製造職人としてはまだ若手とも言える世代。けれど実はすでに国際的にとても評価されている名匠なのです。
モンペリエで生まれ育ち、もともとクラシックギターを学んだ人で、コンセルヴァトワールなどで研鑽をつみ、ギタリストとしてコンクールなどにも出ていた人。けれどかなり早い段階で本人は楽器作りに興味をもったようで、高校生の年齢で、アルザス地方にあるフランス国立の弦楽器製作学校(L'Ecole Nationale de Lutherie)に入り、ディプロムを得ています。
その後アメリカに渡り、ニュージャージにある専門学校で研鑽を積みました。
その後も何人かのヴァイオリン職人の工房で修業を積んでから、2001年に自分の工房を開くことになるのですが、2016年にはモンペリエから西へ40キロの村に引っ越し、そこで思う存分自分の創作に没頭する環境を得たようです。
その工房でヴァイオリン、ヴィオラ、そしてチェロを作っています。
若くして自分の工房を構えたり、恵まれた環境の場所に引っ越すなど、話を聞いているだけでもその道で成功をしてきた人なのだなとわかりますが、詳しく話を聞くと、本当に世界的に優れたヴァイオリン職人なのだとわかります。
この二コラさん、顔をみて、名前を聞いて、なんとなくどこかで会ったことがあるような、、、と思ったのですが、それも正解。数年前にモンペリエで「木」にまつわる国際学会が開かれたのですが、そこに通訳の助っ人で参加した私は、その時に家具製作の職人さんや楽器作りの職人さんと出会い、その中にこの二コラさんもいたのでした。
私とは同世代で、静かでとても控えめな感じで、どこかひょうひょうとした感じもあり、パッと見ではそんなすごい人だとは全くわかりませんが、逆に、こういう人が玄人中の玄人、プロ中のプロなんだろうなとつくづく感じました。
モンペリエって、日本人として人口から考えたら本当に小さな街なのですが、こうしていろいろな分野で世界的にトップレベルの人がふらっと現れたりして、ひょんなご縁でそういう出会いにも恵まれた私にとっては、この街で暮らすおもしろさの一つです。
それではまた追ってこのアトリエの続きをお伝えしたいと思います。
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