2022年9月4日日曜日

Clients fidèles / 常連客

いつの頃からか、モンペリエ生活の中で自分にとっての行きつけのお店というのがいくつかできました。私が頻繁に通うカフェやレストランのことですが、単にしょっちゅう足を運ぶだけでなく、お店のパトロンやスタッフと気が合って、おしゃべりもしたり、何かといろいろな交流が生まれるような関係ができたお店のことです。

日本生活ではよく通うお店はあったとしても、お店のスタッフとおしゃべりをしたりする関係になったことはなかったように思うし、なんせ大都市の大人数の中にいると、一人一人が匿名のその他大勢になってしまいますよね。カフェやお店の前を通るだけで、「おはよう!元気?」なんて会話をしたことはなかったように思います。

そんな自分にとっては、ここモンペリエで自分が自分のことを「常連客」だと認識する状態は新鮮でした。

よく通う客のことを、フランス語ではclient fidèle (クリヨン・フィデル)といいますが、なじみの客、常連客、お得意さんと、いろんな表現がシチュエーションや関係性によって当てはまりますね。

私にとっての馴染みのお店というのは、パトロンがイタリア人だったりアルゼンチン人だったり日本人だったりと、フランスに住む外国人が多いのですが、フランス人が経営するお店でも、なんだか気が合っておしゃべりする機会も増えて、いつのまにやら常連客になりました。

気さくで気前のいい彼らとは、通う度にいろいろな融通度が増していくのですが、おまけやサービスをしてくれるようにもなり、こっちはもっと頻繁に通いたくなるし、通えば通うほど、お得意さん度が増していき、あからさまな特別扱いをしてくれて、こっちはお店の繁盛を祈ってますます応援したくなるものです。なんだか果てしないポジティブパワーの相乗効果で、お店が閉店とならない限り、半永久的に続く関係です。

私の行きつけのお店の中で一番新しいのは、コロナ禍の真っ最中にオープンした、若いアルゼンチン夫婦が経営するカフェ「Station Sucrée」です。

 



モンペリエの中心地の Rue de l'universitéにあるカフェで、外からも見えるショーウィンドーに可愛らしいケーキが並んでいます。その「ケーキが外から見える」というスタイルが、一人の日本人の目を引くのに成功しました。日本では通りを歩いていて、ケーキが目の前に見えると言う展示陳列スタイルが結構ありますもんね。

種類豊富なケーキが食べれるカフェで、学生街にあることもあって、とってもリーズナブルなお値段。甘いもの好きにはたまらないお店です。

アルゼンチンというと、私にとってはタンゴとエビータ関連以外では、あまりよく知らない国で、過去に一人アルゼンチン出身の振付師と一緒に仕事をしたことがあるくらいでした。

このお店に通うようになって得た驚きの発見は、アルゼンチン人が甘党だということ!フランス人にも食いしん坊はいますが、日本人がいう「甘党」というほど、いつでもどこでも甘いもの好きという人はあまりいないのです。

方や、アルゼンチン人は朝から甘いクロワッサン、デザートにはキャラメルクリームたっぷりの濃厚系ケーキがたくさん。見事な甘党食文化です。

このカフェを経営する夫婦は、二人共、もともと法学の勉強をしました。企業法関係専門の弁護士の卵としてキャリアをスタートしようというところで、自らが会社経営に乗り出したという、ユニークな経歴の持ち主。私も彼らも外国人ということで、いろいろとお互いに興味をもってしまって、質問しあいっこなどしているうちに、あっという間に常連になりました。

彼らのお店は月曜日から土曜日までオープンしていて、手作りケーキのために毎朝5時から調理場にたつ彼ら。その頑張り屋具合を目にして応援しないわけにはいきません。

私が食いしん坊で大の甘党ということは彼らもすぐ察知し、新商品が出ると私の感想や意見を求めてくるようになりました。

 


 そんなこんなで数か月が経った頃、彼らはブランチメニューと共に日曜日もオープンする計画を立て始めました。

メニューを考えたり、新商品を考えたりして、その都度いろいろと話を聞いていたのですが、この夏のとある日曜日、VIP客のために特別オープンにして、ブランチメニューの試食会を開催するからぜひ来てほしいとお誘いを受けたのです。

新年度の9月から日曜日のブランチを開始したいから、その前にみんなの意見が聞きたいというのです。テラス席をのぞけば、彼らのお店は小さな店舗。その中に極わずかな数の常連客を招いて、各自はコーヒーやドリンク代だけを支払い、食べ物の方は全部無料という大サービスの提案。

幸い都合もついたので、当日はびっくりするような雷雨の朝だったのですが、ちょっと収まったかなというタイミングで、張り切って出かけました。

 

 

彼が考えたメニューは、お食事系(un plat salé) 一品と、デザート系 (un plat sucrée/dessert)一品の組み合わせ。そこへ飲み物を加えてのセットメニューです。

それぞれ「VIP客」という名称、そして待遇にうれしさを隠せない人達が集まって、みんな目をキラキラ輝かせて説明を聞きました。

お食事系のメインの一つは、メディアルーナというアルゼンチンの甘いクロワッサンにスモークサーモンなどを挟んだサンドイッチ。

 


チョイスで選べるもう一品の方は、なんとびっくり、日本人にはおなじみのサンドイッチスタイル。ハム玉サンドです。

 

 
 
 
フランスでサンドイッチというと、バゲットパンにいろいろと挟んだものを指すので、アルゼンチン人にとってのサンドイッチが、日本のサンドイッチと同じタイプだとは、この時初めて知ってびっくりしました。食を通しての異文化交流を実体験です。
 
ここにデザートもついて、自分のポケットから出たのは飲み物代だけ。カフェオレを頼んで4.5ユーロ。 

すごいボリュームたっぷりのブランチメニューを、なんやかんやいいながら完食したので、朝昼兼用の食事だったとは言え、午後も夕方もお腹がすくことはなく、一日おいしい気分で満たしてくれました。VIP待遇とはすごいもの。
 
客同士も、「あなたもVIP、私もVIP!」じゃないけれど、みんな最初から最後までうれしさ爆発。私はこの日、結局10時から15時までという長居歴代記録をマークしました。
 
このお試し会からおよそ一か月。
フランスでは新学期も始まり、9月最初の日曜日である今日から正式に日曜日のオープンがスタートし、ブランチメニューが始まりました。
 
常連客としては、初日に顔を出してなんぼですよね。(笑)はりきって朝から行ってきました。
 
彼らはVIPの試食会で得た感想をもとに、メニューの改良を加え、正式に発表されたブランチメニューから、 メインとデザートと違うものを一つずつ選んで二人分がこれ。
 

彩も鮮やかですが、本当に食べごたえいっぱいです。

もしモンペリエに私の他にも甘党さんがいらっしゃるなら、甘いものが食べれるカフェの一つとして、彼らのお店をどうぞリストに加えてください。 お店でも食べれるし、テイクアウトもできますよ。

カフェ「Station Sucrée」のサイトはこちら 

フェイスブックでもインスタグラムでも、彼らは熱心に投稿を更新しているので、おいしいものを目でもお楽しみください。

カフェ「Station Sucrée」のフェイスブックページはこちら

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