2022年10月29日土曜日

旅の醍醐味、国境

自分にとって、一番の趣味、時間とお金があればしたいことの一番は旅。

かれこれ30年近く、自分にとっての趣味は旅です。

コロナ禍を経験して、自由に動くことができないことがあるのだと知り、それが自分にとってどれだけ苦痛か、どれだけストレスがたまることになるか、それまで想像もしていなかったことを、身をもって知ることとなりました。

小さいころから親に日本国内のあちこちに連れていってもらったので、どこかに出かけることにはもともと慣れてました。

10代も後半になってアルバイトをし始めてからは、自分で計画して、アルバイトでお金を貯めては、海外旅行にでかけるようになりました。

当時、旅の醍醐味と言えば、飛行機での旅でした。

空を飛んで、雲の上の世界を見まわしたり、遠く下に見える地上を見ることで、ワクワクしていました。

自分にとって、旅に出ること、冒険に出かけること、それは飛行機に乗ってどこか遠くに行くことのようになっていました。 

フランスで生活しているうちに、日本からでは行きにくい国を含め、いくつかの周辺諸国で旅をしました。飛行機に乗るとワクワクするのは今も変わりありませんが、日本に住んでいたときには体感し得なかった、あることに、旅の醍醐味を感じるようになりました。

それは、地続きでの国境を超えること。

島国である日本は海に囲まれ、外国、異国と言えば、海の向こうにある存在です。これは奈良時代の人が中国大陸を思い描いた時も、織田信長がポルトガルを思い描いた時も、伊達政宗がローマを思い描いた時も、今2022年になっても、海の向こうにあるであろう異国を思う時としては同じ感覚です。これはたとえインターネットが便利になっても、世界を旅する人が増えたとしても、島国の日本に生まれ育った日本人が感じる感覚で、大陸に住む人々とは、根本的に感覚が違うんだと思います。

フランスは西側こそは大西洋海岸ですが、北側にはベルギー、東側には北からルクセンブルク、ドイツ、スイス、イタリアと国境を共にし、南西側にはスペインとアンドラがあります。

北側と北東側に関しては、自分は電車の旅で、国境を越えました。

フランスは人種のるつぼで、様々な国の出身の人がいるとはいえ、国境が近づくと、国境の向こう側の国の存在が感じられます。人々の風貌、そして言葉。

自分にとって、これほどワクワクする時はないと言っていいほど、大好きな瞬間です。

東側と南西側については、自分で車を運転して国境を越えました。

もうすぐ国境という地点で国名の標識が見えたら、もう大興奮です。 


 

フランスとイタリアの国境には、一応国境管理施設がありますが、別にコントロールがあるわけではありません。


 

きちんと列をなして国境を越えれば、もうそこはイタリア。

道路標識の表示言語も、イタリアに変わるのです。


 

「ボンジュール!」が「ボンジョルノ!」に変わるのです。

フランスとスペインの国境に関していえば、以前は国境管理施設があったものの、今や何もありません。

道路標識が、「もうすぐスペインです!」と知らせてくれて、 国境地点では「スペイン」と記されているだけ。



そして、何事もなかったかのように、道路標識はスペイン式表示に変わるのです。



地続きで、道路もつながっていて、本当にそのまんま。

でも「サリュー!」が「オラ!」になるのです。

この越境は、まるで日本国内で県境をまたぐようなものです。それでも島国からやってきた自分には、最高のワクワク感を得られる瞬間なのです。

何世紀も前、昔は地理的要因が自然と国境を作っていたケースが多いわけですが、フランスとイタリアの間にあるアルプス山脈や、フランスとスペインの間にあるピレネー山脈を見上げる時、昔の人の感覚を感じるときがあります。

ピレネー山脈のなかでも景観地としてよく知られる場所に、ガバルニー圏谷があります。高さ3000メートルの山々が連なる場所でもあります。


 

絶壁の絶景という感じの場所ですが、この壁の向こう側にはスペインがあるわけです。電車も車もなかった時代、人々は歩くか馬に乗るかくらいしかなかったのですが、高い山を越えて、峰から異国を見下ろすときの気分とはどんなものだったのでしょう。旅のロマン、冒険のロマンがあふれていて、想像するだけでもワクワクします。

けれど、2022年になっても、その感覚を実際に体験している人たちもいるのです。

それはハイレベルのハイカー達。

ピレネー山脈にはいくつかのプロレベルの高山ハイキングコースがありますが、このガバルニーの周辺は、強者たちにはとても知られたコースがいくつかあり、今も実際に徒歩で、標高3000メートル以上のレベルで、国境を超える人たちがいるのです。

スペインからフランスへ、フランスからスペインへ、反対側が見えるその瞬間の感動とはいかんばかりか。想像するだけでワクワクして、 興奮してしまいますが、自分の体力では無謀なだけで、とても計画すらたてられません。

日本での生活とフランスでの生活には、比べだしたらキリがないほど、たくさんの違いがありますが、文化やメンタリティーの面での違いの根本には、この国境の感覚の違いが大きく影響していると、私は確信しています。島国の人と大陸の人には、交わうことのない、根本的な違いがあると思いながら、社会ウォッチングを続けてきたいと思います。

1 件のコメント:

まるこ さんのコメント...

地つずきでいろんな国へ行けるのはすごく面白そうです、戦争がなければね。車にそれぞれの国のマークを見るのは楽しいですね。