2010年6月27日日曜日

日本人とフランス人

フランスに憧れを抱いている日本人はけっこういますよね。
それがフランス語を習い始めるきっかけになったという人や、憧れを抱いてそのままフランスにやってきたという日本人はたくさんいます。

でも実際にフランスに来てからどうなるかというと、フランスが好きなのにフランス人という人々の実態を見てびっくり!というのがよくある話。
街中やお店やお役所でのフランス人の態度が、あまりにも日本で慣れてきた人々の態度と違って、まるで無視されたり邪険にされたような扱いを受けたり、きつい物腰で冷たい言葉を投げられてびっくりショックを受けるというものです。
そのままひどくなると、今やフランス人の間でも有名な「日本人のパリ症候群」という状態に陥ってしまうケースが多いようです。
「パリ症候群」とはパリに住む日本人精神科医が名付けた症状で、つまり、夢やあこがれを抱いてパリまでやってきた日本人が陥る、カルチャーショックに伴う引きこもりやうつ状態のことをいいます。

一方、漠然とした憧れとは別に、はっきりとした自分の道を持っている人、例えばフランス料理やお菓子作りの道、あるいは音楽やダンスの道、といった志を持っている日本人の場合、こちらにきて特にショックで落ち込むなんてところまではいかなくて、「フランス人」という人々の行動、習性に対し、「彼らはああだから。」とわりきった見方ができて、特別興味も示さず、、、といった感じがあると思います。

いずれにせよ、フランスに住む日本人で、一般的にフランス人の習性やメンタリティーを高く評価している人はほとんどいないんではないでしょうか。(笑)
「教育がなってないよね。」とか「モラルが低いよね。」といったコメントが在仏日本人の口からよくもれます。

なぜかって、彼らの文化、彼らの考え方、行動の仕方というのは、日本人が身につけてきた教育観、道徳観からいって、よしとされないものだから。

日本とフランス、どちらもサミットに参加する世界先進国の一国であるのだから、経済レベル、生活レベルはだいたい同じのはず。なのにメンタリティーはまるで違うのです。

組織を第一に考える日本。個人を第一に考えるフランス。
個人的な主張を控えるのがよしと考える日本。誰もが個人的な主張をするのが当然なフランス。
謙遜を美徳とする日本。アピールをすることが大事な能力の一つとみなすフランス。
必要以上に非を認めて謝る日本人。自分に非があったとしても絶対に謝らないフランス人。

この4点だけを見ても、まるで正反対です。。。

私はもともとフランスという国に対して特別な憧れや期待をもっていなかったし、フランス人がどういう人たちかということは前知識としてわかっていたから、こちらに来てからびっくり、ショックといったことはありませんでした。しいていえば、「ああ、ここまでか、、、、、。」というガックリ感とかはありましたけどね。
そんなまま7年間が過ぎた今年、実は「ああ、ここまでか、、、。」というのがさらに深まり、正直言って、フランス人嫌いモードというか、ちょっとうんざりきて、周りのフランス人たちに、「最近、私アンチ・フランス人モードに入ってるから、、、、、。」と冗談半分でこぼしたりするようになってきました。

フランス人に囲まれて仕事をしている中で、「彼らはこうだから。」と理解しようと努力してきた半面、やっぱり私の中にしみ込んでいる道徳観、教育観と食い違うために、たくさんの小さな不一致がつもりつもってきてたんでしょうね。
そこへ、ここ数ヶ月間、フランス人同士のぶつかり合いに直面し、その間に身を置くこととなり、私なりの方法で話し合いを持ったり、意思表明をしたりしましたが、やっぱり痛感したのが根本的な文化の違いです。

前にも話ましたが、二国を比較するのは一口では済ませることができないことで、社会のいろんな要素を考慮に入れなければいけません。

でも組織優先主義と個人優先主義というだけで、十分大きな違いでしょう。

組織優先、全体優先が行きすぎて「出る杭は打たれる」となってしまう日本社会も悲しいですが、いつでもどこでも個人がそれぞれ主張して衝突してばかりのフランス社会というのはとても疲れるものです。

苦しい状況にいても弱音をはかない、文句を言わないことを美徳とするサムライスピリッツの国、日本。立場や上下関係のために思ってることが言えずに、全部お腹の中にためてお酒の席でうっぷんを晴らす人、または泥酔状態になる人。日本ではどこでも見られる姿ですが、フランスではこんな人を見かけることはありません。
意思表示をしない文化で、なんでも自分の心に押し込めて、ストレスをためて、果てはそのせいで病気になったり死んでしまう人が多い国、日本。

フランス人社会では、不満を内にためるということは基本的にしません。
文句を言うのが悪いことなんていう概念も存在しないに等しいのです。
だからフランス人はとにかく文句を言い、不満を口にし、苦しい状況でも耐えるのではなくて、苦しい状況を生み出している害そのものを相手に取り除くように強く要求するのです。
そのため、ぶつかり合いは日常茶飯事。
でも、ぶつかりあいって、当の本人にも、周りで見てるだけの人にとっても、とても疲れるものです。
ぶつかってぶつかって、、、、。消耗されるエネルギーは相当なものです。

ふと、この状況について、「疲れる、、、」と愚痴をこぼした私に、とあるフランス人の友人は、「でも、我慢して我慢して、なんでも内にためてストレスで死んでしまうよりはましなんじゃないか?」と言いました。

何がよくて、何がましなのか、、、。

完璧な人がいないように、完璧な国、完璧にバランスのとれた社会なんて存在しないわけですけど、こうした日本とフランスの違いを見ていると、もうちょっと真ん中をとってうまい具合にいかないものかな、、、と歯がゆさを感じるものです。

そこへふってわいたのがサッカー・ワールドカップで明るみになった、フランス代表チームの内部分裂崩壊劇。

日本でもメディアが話題にしていたようなので、耳にした人は多いのではないですか?

関係者それぞれに言い分があるだろうし、メディアのせいで話がおかしく大きくなったというのは事実でしょうが、私からみたら「これだからフランス人は、、、、。」と言いたくなるような、フランス人のメンタリティーの負の部分が一気に噴き出した出来事でした。

理由はどうであれ、大事な試合を控えておきながら練習をボイコットするなんて。
責任感もへったくれもありません。

どの観点から見ても、日本ではおこりえない出来事ですよね。

もちろんフランス人にとっても、今回の出来事は見てられないものだったので、フランス代表チーム全体が国民からの大ひんしゅくを買い、政治家も入り込んでの大非難がわきおこりました。

この後で、先日の日本対デンマーク戦の中継放送が行われたんですが、我らが日本チームはフランス人の目に眩しく映ったのです。
岡田監督自身もチームプレイを見せれたと評価していましたが、フランス人は日本チームをチームが一丸となっている、団結してフォローしあって勝利を得たチームと称えました。
テレビのコメンテーターも「こんな代表チームが見たかった。」とか「見ていて気持ちがいい。」と連発していました。

日本社会の組織優先主義が素敵な形で表れて、それが個人主義者のフランス人に称えられて、私もうれしかったです。

フランスの有名な歴史小説に「三銃士」がありますが、そこでの有名なセリフは「一人はみんなのために。みんなは一人のために。」です。
でも残念ながら、このキャッチフレーズは、当のフランス人に限って言えば幻想でしかありません。。。
「俺が、俺が」、「私が、私が」の国ですからね。

ま、それはそうと、今回の代表チームのできごとで悲しいことだと思ったのは、フランス人の中でもさらに「フランス人」を区別する動き。

つまり、多民族国家フランスがかかえる移民問題のことです。

サッカーのフランス代表チームのほとんどが、アルジェリアなどの北アフリカ系かセネガルなどの中央アフリカ系の移民の家庭に生まれた人達ということは、周知の事実です。

そのために、「今回問題を起こした代表チームのメンバーは本当のフランス人じゃない!」とでもいわんばかりの主張をする人たちは少なくなくて、「やつらがフランスの顔に泥をぬる。」とか、「奴らを教育しなおさないといけない。」とか言いだしたんですね。

フランスの移民問題、民族問題は本当に根の深い深刻な問題となってきています。

きっとこのことは、憧れを抱いてフランスにやってくる日本人にとっても最初のショックの一つでしょう。
今日、実際のフランスという国、フランス社会というのは、ヨーロッパのさまざまな国の白人はもちろん、アフリカ系、中東系、そしてアジア系といったあらゆる民族が混ざって暮らす場所なのです。

このことだけでも、また改めて話題として取り上げたいと思います。

今日のところ、何が言いたかったのか、、、。

移民うんぬんを別にしても、とにかくフランス人という人々にお腹いっぱいになってしまって、しばらくお休みが欲しいなあ、なんて思ってたこのごろなのでした。
フランス人に囲まれながら「アンチ・フランス人週間」とか言っても、みんなから怒られるだけですけどね。(笑)

あげくのはてに最近よく言われるのが、「leonardoはすっかりフランス人になっちゃって!」というセリフ。つい3日前には「leonardoまでもがやっかいなフランス人みたいにならなくていいんだよ!」と言われました。もちろん言ってるのはフランス人。(笑)

言われるがままとか、相手からの要求や頼みをいつも100%受け入れていてはやっていけないことがわかったから、少しずつ適した対応をするようになってきた私ですけど、それでも本当のフランス人の足元にも及びませんよ。
彼らは相手の要求を受け入れるとかうんぬんじゃなくって、自分の要求をいかにして100%受け入れさせるかですからね。(笑)

彼らって、一応自分たちが世界的に見て尊敬を集める集団ではないということを認識してるみたいなところがちょっとおもしろい。
「日本人は勤勉。フランス人はなまけもの。」
「日本人は規律があって集団行動ができる。フランス人はみんな勝手なことして無茶苦茶。」
「日本人は文句を言わない。フランス人は文句言ってばっかり。」
なんてことはフランス人が私に言うことです。

世界中のホテルでアンケートを行った結果、ホテル側にとっていつでも歓迎したいのは日本人で断トツの一位だったと発表されています。一方、来てほしくない、めんどうな招かれざる客と言うのがフランス人で一位。

ぷぷぷ、って感じですね、ここまでくると。

概して、フランス人は自分が当事者でないときは、客観的に物事が見えて良し悪しがわかるみたいなんですよね。
それが自分のこととなると、まるで相手のことはお構いなしで、自分の主張の一点張りになってしまうから恐ろしい。

フランス人って。。。

最後にフォローというのもなんですが、フランス人の中にももちろん心根の優しい、相手への気遣いにあふれる人もいますよ。(時と場合によりますが。)

あしからず。

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